今日の診療
治療指針

シックハウス症候群/化学物質過敏症
sick house syndrome(SHS)/multiple chemical sensitivity(MCS)
東 賢一
(近畿大学大学院准教授・環境医学・行動科学)

頻度 よくみる

治療のポイント

・シックハウス症候群は,居住に由来するさまざまな健康障害の総称であり,代表的な原因としては,居住環境内に存在する建材,内装材,家具などから放散される化学物質がある.例えば,室内濃度の測定などによって原因を把握し,それを除去することや換気などで室内濃度を低減することが重要である.

・化学物質過敏症は,化学物質への曝露によって,シックハウス症候群に類似した非特異的な症状を呈するが,居住環境に起因する化学物質のみならず,自動車排ガス,燃焼排ガス,たばこの煙,洗剤,柔軟剤,芳香剤,新品の紙類に使用されるインクや漂白剤,整髪料,香水,殺虫剤など多様な燃焼生成物や化学製品に非特異的に反応する.したがって,問診などによって原因を把握し,それを除去する,あるいはそこから離れることが重要となる.ただし,いったん化学物質過敏症の病態になると,長期間回復しない症例が散見されることから,日常生活における予防が重要である.

◆病態と診断

A病態

・シックハウス症候群は,医学的に確立した単一の疾患ではなく,居住に由来するさまざまな健康障害の総称とされている.主な症状としては,皮膚,眼,咽頭,鼻腔などの皮膚や粘膜の刺激症状,全身倦怠感,頭痛,頭重,吐き気,めまいなどの自律神経系の不定愁訴精神神経症状がある.シックハウス症候群を引き起こす原因としては,建材,内装材,家具などから放散される室内環境中に存在する化学物質が代表的である.

・化学物質過敏症は,最初にある程度の量の化学物質に曝露されるか,あるいは低濃度の化学物質に長期間反復曝露されていったん過敏状態になると,その後きわめて微量の同系統の化学物質に対しても過敏症状をきたす病態とされている.シックハウス症候群に類似した非特異的な症状を呈する.発症のきっかけとなった化学物質への曝露事象としては,自宅や職場の内装工事で使用された有機溶剤

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?