今日の診療
治療指針

カドミウム中毒
cadmium poisoning
諏訪園靖
(千葉大学大学院医学研究院教授・環境労働衛生学)

頻度 情報なし

治療のポイント

・曝露の指標として血中と尿中のCd濃度が用いられる.

・生物学的許容値として,尿中Cd濃度5μg/g・Cr,血中Cd濃度5μg/Lが提案されている.生物学的許容値とは,生物学的モニタリング値がその勧告値の範囲内であれば,ほとんどすべての労働者に健康上の悪い影響がみられないと判断される濃度である.

・急性曝露で呼吸器障害,慢性曝露で腎障害,骨粗鬆症,骨軟化症,貧血が生じる.

・呼吸器障害には酸素吸入や人工呼吸器による呼吸管理,腎性貧血,骨障害についてもそれぞれに対する治療が中心となる.

◆病態と診断

A病態

・カドミウム(Cd)は,青みを帯びた銀白色の軟らかい金属である.金属のCdは水にほとんど溶けないが,カドミウム塩のなかには水溶性のものがある.粉末のCdは燃焼し,腐食性のガスが生じる.金属(亜鉛)精練の副産物としても発生する.ニッケル-カドミウム電池として多く利用され,顔料,鉛,錫との合金,防錆のメッキとしても利用される.

・経気道曝露では,Cdの粉塵やヒュームを呼吸することで呼吸器に入り,その10~50%が血中に移行し体内に吸収される.重症の場合,化学性肺炎,肺水腫を生じ死に至る.タバコの煙にもCdが多く含まれている.経口曝露は,主として食品由来で腸管より体内に吸収され,その吸収率は,女性で10%,男性で5%程度と推定されている.Cd化合物の皮膚吸収はごくわずかである.

・体内のCdは,腎臓に運ばれ近位尿細管に蓄積する.長期曝露では,尿細管障害が生じ,糸球体障害が続く.さらに,骨粗鬆症と骨軟化症,腎性貧血が生じ,重症例はイタイイタイ病として知られている.長期の経気道曝露では肺気腫が生じる.

・カドミウムに関する特殊健康診断の受診者数は平成30年で4,130人であった.

B診断

・曝露の指標として血中と尿中のCd濃度が用いられる.筋肉,腎皮質,肝臓および尿中のCd濃

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