骨折の合併症は受傷後早期に生じる急性期合併症と治療の経過中に生じる晩期合併症に分類される.前者としてはショック,神経血管損傷,脂肪塞栓,コンパートメント症候群,深部静脈血栓症などがあり,後者としては遷延癒合,偽関節,骨壊死,複合性局所疼痛症候群などが挙げられる.本項では初診時の対応が必要となる,急性期合併症について解説する.
◆病態と診断
・ショックは主に骨折部からの出血や組織液の漏出によって生じ,特に骨盤,大腿骨などで危険性が高い.顔色,呼吸状態,脈拍,冷汗などに注意をする必要がある.
・神経・血管損傷は尖った骨折縁によって隣接する神経や血管が損傷されることが多く,骨折部遠位の脈拍触知の有無,皮膚温や色調の変化,感覚・運動障害などを注意深く診察する.診断の確定に血管造影を行う場合もある.
・脂肪塞栓は大腿骨骨折に代表される長管骨骨折後みられ,受傷後24~72時間で発症することが多い.低酸素血症