今日の診療
治療指針

上腕骨近位部骨折
proximal humerus fractures
守重昌彦
(ぜんしん整形外科・院長(東京))

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治療のポイント

・多くは保存的治療により良好な結果を得ることができる.そのため,高齢者では手術合併症を考慮し慎重に手術適応を検討する必要がある.

・手術治療には多くの術式が存在するため,骨折型や術者の技量に応じて適切な方法を選択する.

・高齢者の粉砕骨折については,リバース型人工肩関節置換術を選択することで機能的回復が得られやすい.

・骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折が多く,骨粗鬆症治療について必ず確認し介入する.

◆病態と診断

A病態

・高齢者では転倒などで生じる脆弱性骨折として頻度は高い.

B診断

・単純X線撮影では,正面,scapular-Y撮影,軸写の3方向で診断する.

・治療方針確定のためにはCTが必要なことも多い.特に,大・小結節の転位は単純X線では過小評価されがちである.

◆治療方針

 Neer分類により治療方針を検討する.骨片間に1cm以上ないし45度以上の転位があれば,別のpartであると判断される.したがって,骨折線が多くても転位が小さければ1partと判断する.

 高齢者では手術のリスクベネフィットを考慮すると,絶対的適応以外では保存治療が推奨される.転位の程度による機能予測と患者のニーズ,術者のスキルで判断する.

 若年者で転位がある場合は,機能障害を残さないために手術治療が選択される.0.5~1cm以上ないし20~45度以上の転位がある場合は,保存治療では多少なりとも障害が残る可能性がある.特に大結節の転位はインピンジ症状が残りやすいので,0.5cm以上の転位は手術が推奨される.

A保存治療

 主に1part骨折と転位の少ない2part骨折が適応となる.スリング(+体幹)固定とし,安定性に応じて1~3週間から振り子運動を始める.4週以降は骨癒合をみながら積極的な運動療法を行う.2partでは,体幹固定を強くしてしまうと骨折部が外反するので注意する.

B手術治療

 手術の絶対適応

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