今日の診療
治療指針

肘部管症候群
cubital tunnel syndrome
山本真一
(横浜労災病院 手・末梢神経外科部長)

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治療のポイント

・肘部尺骨神経障害であり,2番目に多い絞扼性神経障害である.

・頸椎症(C8障害)や急性~亜急性の神経障害との鑑別が必要である.

・筋力低下があれば専門医へ紹介のうえ,手術治療が考慮される.

◆病態と診断

・原因として変形性肘関節症が最も多く,小児期の肘周辺骨折後(外反肘など)の遅発性尺骨神経麻痺や,滑車上肘筋など解剖学的破格によるものなどがある.

・病歴聴取が重要であり,基本的に緩徐進行の慢性経過をたどる.急性~亜急性発症の場合には,肘内側での圧迫障害や単神経炎との鑑別が必要である.

・短母指外転筋を除く手内筋麻痺や鉤爪(claw)変形,環指尺側(ring finger splitting)・小指・小指球・背側枝の感覚障害など,詳細な神経学的所見から,おおよそ臨床的に診断できる.局所理学所見としては,肘部での神経腫大の触知やTinel様徴候,肘屈曲テストが重要である.

・頸椎症(C8障害)では上腕三頭筋や指伸筋の筋力低下も生じ,環指橈側までの感覚障害が多く,Guyon管症候群では背側枝領域の感覚が保たれる.

・占拠性または腫瘍性病変が疑われる場合には,MRIや超音波など画像検査を追加する.

・確定診断には,神経伝導検査での肘部伝導障害の証明が必須であるが,圧迫障害や単神経炎でも肘部伝導速度は低下しうるので注意が必要である.

◆治療方針

 通常は進行性であるため,診断が確定すれば手術治療が行われることが多い.早期の軽症例には,肘屈曲を避けるなど保存的治療が試みられることもある.圧迫障害や単神経炎では保存的治療が基本である.

 手術には,単純除圧法(Osborne法,軽症例),King変法,皮下前方移動術,筋層下前方移動術などがあり,術式による成績の差はなく,病態により使い分けられる.手内筋萎縮が顕著で複合筋活動電位消失の場合には,示指外転機能再建などの腱移行術が行われる

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