今日の診療
治療指針

内反肘・外反肘
cubitus varus,cubitus valgus
徳武克浩
(名古屋大学大学院特任助教・手の外科学)

頻度 割合みる

治療のポイント

・小児肘関節周辺骨折の合併症として発生しうる.

・整容面の改善は低年齢の伸展変形以外はほとんど期待できない.

・両変形とも遅発性尺骨神経麻痺などの晩期合併症を伴うことがある.

・変形治癒には骨切り術,偽関節には偽関節手術が適応となる.

◆病態と診断

A病態

1.内反肘

・頻度が高いのは小児上腕骨顆上骨折後の変形治癒である.

・内反変形に過伸展と内旋変形を合併していることが多い.

・整容面以外に,尺骨神経麻痺や外側側副靭帯の弛緩による不安定症などの遅発性合併症が問題となりうる.

2.外反肘

・小児上腕骨外顆骨折後の偽関節によるものが多い.

・上腕骨外顆骨折は転位がわずかでも偽関節になりやすく,急性期を過ぎると疼痛が少ないため見逃されることも多い.

・各々の症例での病態や発見時の年齢,本人の主訴によって治療方針が変わる.

B診断

・通常生理的外反(肘外反角:男性6~11度,女性11~15度)を有している.

・正面で内反または過度の外反変形を認める.

外傷の既往歴を確認する.整容,機能上の問題点(患者の主訴)を把握する.

・肘関節の疼痛や可動域制限,肘不安定感,環指・小指のしびれ,握力低下などの尺骨神経麻痺症状の有無を確認する.

・単純X線で変形治癒や偽関節などを確認する.健側の比較撮影が有用である.

◆治療方針

A内反肘の治療

 変形が大きく整容面での愁訴があれば上腕骨の矯正骨切り術を行う.近年CTを用いた3次元シミュレーションによる骨切り術も可能である.遅発性尺骨神経麻痺例では前方移動術,肘関節不安定症には靭帯再建術も併用する.

B外反肘の治療

 小児例では積極的に偽関節手術を行う.慢性例で強い外反変形があれば上腕骨矯正骨切り術を併用する.成人で偽関節部の疼痛が強い場合も偽関節手術を考慮する.偽関節部を固定すると可動域が低下することがある.遅発性尺骨神経麻痺例では前方移動術を行う.

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