今日の診療
治療指針

肘離断性骨軟骨炎
osteochondritis dissecans of the elbow
山崎哲也
(横浜南共済病院・スポーツ整形外科部長)

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ニュートピックス

・肘離断性骨軟骨炎例における術中採取した離断骨軟骨片の病理組織学的所見の研究で,発症に際して骨端軟骨深層の離断が先行することが報告され(Am J Sports Med 49:162-171,2021),軟骨下骨の壊死ではなく,外傷性の軟骨下骨折が病態の主因であることが示唆された.

治療のポイント

・初期には無症候性である場合が多いことを念頭におく.

・病期により治療方針が異なるため,各種画像検査にてしっかりと評価し,自己修復しうる臨界点を越えているかどうかの判断が重要である.

・自己修復が期待できない場合,漫然とした保存的治療は避けるべきであり,本人,家族とよく相談し,手術的治療も考慮する.

◆病態と診断

A病態

・肘離断性骨軟骨炎は,骨化未熟な成長期の上腕骨小頭に生じる骨軟骨障害で,野球などのオーバーヘッド動作を伴うスポーツや器械体操などでみられる.

・病態は,軟骨下骨の骨折,変性,壊死による関節軟骨の離断であるが,病因とし,腕橈関節への反復する外力以外に,血行障害による虚血や遺伝的素因などの関与も挙げられている.

・10歳前後で発生するが,発生初期には症状の乏しい例が多く,病期の進行に伴い投球時痛や関節可動域制限を生じてくる.

B診断

・身体所見としては,上腕骨小頭部の限局した圧痛,可動域制限による伸展・屈曲強制時痛,屈曲位での外反ストレスでの疼痛が特徴的で,関節炎の併発により腕橈関節周囲に圧痛を認めるようになる.ただ前述したように,初期には,症状および身体所見を認めない場合が多いため,医療機関を受診することはまれであり,最近では,超音波検査を使用した野球肘検診にて発見されることも少なくない.

・画像診断の基本は単純X線像で,その際,肘関節45度屈曲位正面像や30度外旋位斜位像を用いることが提唱されている.上腕骨小頭のX線像所見により,透亮期(初期),分離期(進行

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