頻度 よくみる
治療のポイント
・ステロイド腱鞘内注射は有効だが,腱断裂を避けるべく高用量投与や頻回の投与は避ける.
・糖尿病合併患者では,手術を積極的に検討してもよい.
◆病態と診断
A病態
・ばね指は屈筋腱のA1腱鞘における腱鞘炎であり,ドケルバン病は第1伸筋腱区画の短母指伸筋腱,長母指外転筋腱の腱鞘炎である.
・いずれも中年以降の女性や手を多く使う人に多くみられるが,ドケルバン病は周産期に罹患することも多く,解剖学的には第1伸筋腱区画の隔壁構造の有無との関連がいわれている.
・一度に複数指の腱鞘炎症状を呈する場合は,関節リウマチなどの全身性疾患に伴う腱滑膜炎の可能性も考え,各種血液検査なども検討する.
B診断
1.ばね指
・A1腱鞘の圧痛,スナッピング(ばね現象)の触知,過伸展時疼痛などで診断する.
・時に有痛性のしこりを触知するが,多くは腱鞘由来のガングリオンであり,診断には超音波検査が有用である.
・症状は多彩で,腱の通過障害が悪化するとばね現象ではなく可動域制限に至ることもある.指全体の痛みを訴えることもあり,指を痛がる患者ではばね指を疑い診察するのが肝心である.
2.ドケルバン病
・第1伸筋腱区画の圧痛,Finkelstein test,Eichhoff testなどの疼痛誘発テストで診断する.
・腫脹が強いこともあり腫瘍ではないかと患者が訴えることもある.実際に骨腫瘍が発見されたこともあり,症状が明らかでも,筆者はX線あるいは超音波などの画像検査を一度は行う.
◆治療方針
A保存治療
1.軽症
局所の安静,湿布などの外用剤を処方する.
2.中等症以上
腱鞘内ステロイド注射を行う.ばね指の場合はトリアムシノロンアセトニド5mg+1%キシロカイン0.5mLを注射する.ドケルバン病の場合は,前述のように隔壁によって第1伸筋腱区画が複数に分かれていることが多く,トリアムシノロンアセトニド5mg+1%キシロ