今日の診療
治療指針

手根骨・手指の骨折
fracture of the hand and carpal bones
上原浩介
(埼玉医科大学講師・整形外科学)

Ⅰ.手根骨の骨折

◆病態と診断

・舟状骨の骨折が最も多く,三角骨,有鉤骨,大菱形骨の骨折が続く.

・舟状骨骨折は,手関節背屈位で手掌から手をついた際の剪断力で生じる.疼痛が軽度であったり,初期にはX線上の転位がないことがあり,整形外科医でも見落とすことがある.

・三角骨骨折は,背側の裂離骨折が多く,体部骨折が続く.背側裂離骨折の受傷機転は,手関節掌屈+橈屈,もしくは手関節背屈+尺屈強制で生じる.

・有鉤骨鉤骨折は野球・テニスなどのグリップエンドの負荷,手掌を地面につくなどで受傷する.

・必要に応じてCT(3DCT)やMRIを追加する.

◆治療方針

A舟状骨骨折

 転位のわずかな安定型骨折に対しては,thumb spica castによる保存療法を行う.早期のスポーツ・社会復帰を希望する場合,転位がみられる場合には内固定材を用いた手術療法を選択する.偽関節例には植骨を行うが,最近では関節鏡下に行う施設もある.血行の問題から,特に近位の骨折で治療期間が長くなりやすい.

B有鉤骨鉤骨折

 放置することで尺側指の屈筋腱断裂が生じえるため,疼痛がなくても放置すべきではない.骨片摘出が一般的で社会復帰も早いが,症例に応じて観血的整復内固定術や,転位がわずかであればギプスによる保存療法も選択されうる.

Cその他の手根骨骨折

 転位の程度,重要な靭帯の付着部かどうか,脱臼を合併しているかどうかなどを考慮し,治療方針を決定する.

■専門医へのコンサルト

・単純X線のみでは診断が困難なことがあり,見逃されることがある.初期に適切な治療を行わなかった場合,変形性手関節症や手根不安定性に進展しうる.骨折の可能性が否定できない場合には,早期に手外科専門医受診を勧めるべきである.

■患者説明のポイント

・舟状骨骨折は数日~数週で疼痛が軽減することがあるが,放置すると数年~数十年の経過で変形性手関節症や手根不安定症に進展しうる.そのため

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?