今日の診療
治療指針

デュピュイトラン拘縮
Dupuytren's contracture
山内大輔
(福井県済生会病院・整形外科副部長)

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治療のポイント

・外科的治療以外では症状の改善は難しく,専門医への紹介が必要である.

◆病態と診断

A病態

・環指,小指を中心に中節部~基節部~手掌部に硬結(cord:病的腱膜)を生じ,徐々に指が伸展できなくなっていく疾患である.

・ばね指のような引っかかり感はなく,指の屈曲は問題なく可能である.浮き上がった病的腱膜は屈筋腱のように見えるが,全く滑走しないことから鑑別は容易である.

・重症例では全指に強い屈曲位拘縮を生じる.

B診断

・原因は不明だが,糖尿病の患者に生じることが多い.糖尿病の重症度とは必ずしも比例しない.

・特徴的な所見から一度見たことがあれば診断は容易である.

◆治療方針

 良性の疾患であり,必ずしも外科的治療を要さない.そのため日常生活が困難になったときに治療を考えればよい.具体的には,手掌をつけて床から立ち上がれない,洗顔時に指が目や鼻の穴に入ってしまう,などといわれる.

 2019年末までは病的腱膜のみを溶かすコラゲナーゼ(ザイヤフレックス:旭化成)注射療法も行われていたが,2020年以後,日本では使用できない.

A手術治療

1.手術の種類

 病的腱膜の切除術が中心である.経皮的に病的腱膜の切離のみを行う選択肢もあるが,再発率が高い.病的腱膜の切除後は,皮膚形成術による皮膚の延長や,局所皮弁を用いての皮膚欠損部の被覆が必要であることが多い.

2.危険度

 病的腱膜は皮膚の真皮層に浸潤している場合も多い.そのため,これを全切除しようとすると皮膚壊死を生じ,創治癒に長時間を要することがある.また,病的腱膜の中に指神経が巻き込まれていることもあり,迂闊に病的腱膜を切除すると指神経も切断してしまう.

3.予後

 若年発症例では,再発率が高い.また,手術時は問題なかった部位に病的腱膜の進展を生じる場合も多く,術前に十分な説明が必要である.

■専門医へのコンサルト

・手術の難易度は高い.十

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