今日の診療
治療指針

槌指(マレット指)
mallet finger
岡崎真人
(荻窪病院・整形外科部長(東京))

治療のポイント

・外傷後に遠位指節間(DIP)関節が屈曲位となり自動伸展不全を呈するもの,つまり補助しないとDIP関節を伸ばせない状態を槌指(マレット指)という.

・病態によって治療法が異なるため,腱損傷なのか,骨折を伴うのか,確認することが肝要である.

◆病態と診断

A腱性槌指

・伸筋腱終止腱の末節骨停止部付近での腱断裂で,ほとんどが皮下断裂である.

・単純X線像で骨折がなく,特徴的な外観から診断は容易である.

・腫脹や疼痛は軽度なことが多い.

・まれに外傷の既往がはっきりしない場合があるが,槌指は急性発症であり,ヘバーデン結節に伴う変形と鑑別する.

B骨性槌指

・伸筋腱終止腱停止部を含む末節骨近位背側のDIP関節内骨折である.

・単純X線像で診断可能だが.斜位では見落とす可能性があり,正確な側面撮影が肝要である.

◆治療方針

A腱性槌指

 手術の優位性は明らかでなく,保存療法が一般的である.アルフェンスシーネや装具を用い,DIP関節を伸展位に(6~)8週間固定する.適切に固定できているか,圧迫による皮膚障害がないか,などに注意する.切創などに伴う開放性断裂に対しては,腱縫合手術を行う.職業などにより外固定を継続できない場合は手術を考慮する.

B骨性槌指

 外固定で骨片の接触が得られる場合,保存療法を行う.骨片が小さい場合は,腱性槌指に準じた治療を行う.転位が大きい場合や,DIP関節が掌側亜脱臼する場合は,手術を行う.経皮的鋼線刺入固定術,観血的整復固定術(スクリュー,hook plateなど)があり,骨片の大きさや受傷からの期間などで術式を選択する.

■専門医へのコンサルト

・骨性槌指に対する経皮的鋼線刺入固定術は小侵襲だが,技術的に必ずしも容易ではない.また,受傷後1か月以上経過すると経皮的な整復が難しくなる.経験が少ない場合は,専門医にコンサルトする.

■患者説明のポイント

・壮年以降では,腱性・骨性いず

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