今日の診療
治療指針

大腿骨近位部骨折
fracture of the proximal femur
松原全宏
(東京大学准教授・救急・集中治療科)

頻度 よくみる

GL大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン2021改訂第3版

ニュートピックス

・令和4年度診療報酬改定にて,大腿骨近位部骨折の患者に対し適切な評価と治療を実施することで,二次性骨折予防継続管理料の算定が可能となった.

治療のポイント

・関節包内の骨折である頸部骨折と,関節包外の骨折である転子部骨折があり,手術方法が異なる.

・48時間以内の早期手術が望ましいとされている.

・二次骨折予防により,脆弱性骨折の負の連鎖を断ち切ることが大切である.

・多職種連携チームによる全人的・包括的なアプローチの必要性が求められている.

◆病態と診断

A病態

・低骨量が原因で,軽微な外力(立った姿勢からの転倒か,それ以下の外力)により発生する脆弱性骨折の1つである.

・発生率は年齢とともに増加し,70歳以降急激に増加する.男性より女性に多く,また,高齢になるほど転子部骨折の割合が増加する.

・脆弱性骨折を受傷した高齢者は,高率に他部位の脆弱性骨折を起こすことが知られており,ADL,QOLの低下・健康寿命の短縮・生命予後の悪化といった,いわゆる脆弱性骨折の負の連鎖に陥りやすい.そのため,骨粗鬆症治療や転倒予防による二次骨折予防が重要である.

・身体機能(歩行能力)の予後には年齢,受傷前の歩行能力,認知症の程度が影響する.

・受傷後1年以内の死亡率はおおむね10~30%と報告されている.

・大腿骨頸部骨折は高齢者のADLを大きく損なう可能性があり,機能障害を最小限に抑え,社会に復帰させることが重要である.大腿骨頸部骨折を受傷した高齢者に対する全人的・包括的な治療を行うためには,治療にかかわる医師・看護師・理学療法士・介護士などが,診療科や部門の垣根を越えて多職種で連携して取り組むことが必要とされている.

B診断

・Scarpa三角や大転子部の圧痛を確認する.

・圧痛が軽微な場合,股関節内外旋による疼痛や足底叩打によ

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?