今日の診療
治療指針

発育性股関節形成不全
developmental dysplasia of the hip(DDH)
大谷卓也
(東京慈恵会医科大学第三病院教授・整形外科)

頻度 〔全新生児の0.2~0.3%(完全脱臼と亜脱臼)〕

ニュートピックス

・先天性股関節脱臼とよばれていた疾患の病態には後天性要因も強く関与しているため,発育性股関節形成不全(DDH)とよばれるようになった().完全脱臼,亜脱臼,脱臼のない形成不全を含めた広い概念を意味する.本項では乳幼児の脱臼を中心に記載する.

治療のポイント

・早期発見,早期治療が最も重要である.

・乳児健診でのチェックポイントを理解する.

・診断が遅れると重症化するため,多くの症例が2次検診を受けることが望ましい.

・年齢や重症度により装具,牽引,手術などから選択して治療が行われる.

◆病態と診断

A先天性要因と後天性要因

・先天性要因には寛骨臼,大腿骨の形成不全や周囲軟部組織の弛緩性などがあり家族性も認められる.

・出生前の環境因子として骨盤位分娩児に多発する.

・後天的な環境因子として生後早期の股関節,下肢の肢位や運動が重要である.誤った扱いは脱臼発生の要因となり,逆に正しい扱いは脱臼の予防あるいは治療にもなる.

B乳児健診での診断

・生後3~4か月の乳児健診で診断されず1歳以降に脱臼が判明して予後不良となる症例が多く,問題となっている.

・健診では股関節に20度以上の開排制限のある児のほか,女児股関節疾患の家族歴骨盤位分娩鼠径・大腿皮膚皺の非対称などのリスク因子を2つ以上有する場合など,多くの児を2次検診へ紹介することが推奨されている.

C整形外科2次検診での診断

・身体診察のほか,超音波や単純X線など画像診断を行う.

・乳児の股関節では,骨化が進んでおらず軟骨成分が多いためX線診断も容易ではない.診断が不明瞭な場合は経過観察あるいは専門医への紹介を行う.

◆治療方針

A出生直後からの正しい取り扱い

 乳児期には股関節,膝関節を深く曲げて自由に動かしているのが自然であり,これを妨げる環境は脱臼を誘発しうるとされる.抱っこは股関

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