今日の診療
治療指針

足関節靭帯損傷
ankle ligament injury
松本卓巳
(東京大学講師・整形外科学)

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ニュートピックス

・関係する諸学会にて足部の運動に関する用語の再検討がなされ,「内がえし/外がえし」は前額面での運動,「回外/回内」は3平面での複合運動と定義された.足関節捻挫の最多の受傷肢位は,足部の回外である.

治療のポイント

・損傷の程度および合併損傷の有無が治療法の選択と予後に関与する.

・新鮮例では,長期の固定を避けて機能的装具療法を行う.

・陳旧例で,足関節不安定症によって日常生活やスポーツ活動に支障をきたす場合は手術適応となる.

◆病態と診断

A病態

・足関節捻挫は最も多いスポーツ外傷であり,その多くは回外捻挫による足関節外側靭帯損傷である.

・足関節外側靭帯は前距腓靭帯,踵腓靭帯,後距腓靭帯の3つで構成される.

・損傷靭帯は前距腓靭帯の単独損傷が70%を占め,前距腓靭帯と踵腓靭帯の合併損傷が20%,残りを三角靭帯損傷や遠位脛腓靭帯損傷が占める.

・適切な治療がなされないと足関節不安定症に移行する.疼痛,腫脹,不安定感,繰り返す足関節捻挫などを生じる.将来的な変形性足関節症の原因となる.

B診断

圧痛点は損傷靭帯の同定および骨折の鑑別に有用である.

・靭帯損傷の重症度分類を以下に示す.

 ・Ⅰ度:靭帯の伸長のみで損傷なし,皮下溢血は軽度で荷重時痛はほとんどなし

 ・Ⅱ度:部分断裂,中等度の皮下溢血と荷重時痛を伴う

 ・Ⅲ度:完全断裂,高度な皮下溢血と強い荷重時痛を伴う

単純X線は骨折の鑑別に有用である.陳旧例では,前方引き出しストレスや内反ストレス下に撮影を行い,距骨の前方移動量や傾斜角にて動揺性を評価する.急性期には筋性防御のため検査困難なことが多い.

・外果の骨端線閉鎖以前の小児では,靭帯損傷よりも付着部での剥離骨折を生じやすい.軟骨性だと単純X線ではっきりしないことも多く,見逃しに注意が必要である.

MRIは損傷部位の同定や骨軟骨損傷や腓骨筋腱損傷などの合併損傷の診断に優れ

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