今日の診療
治療指針

頸椎症性脊髄症・神経根症
cervical spondylotic myelopathy/radiculopathy
大島 寧
(東京大学准教授・整形外科学)

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GL頸椎症性脊髄症診療ガイドライン2020(改訂第3版)

治療のポイント

・神経根症は片側の上肢痛・肩甲部痛を呈することが多く保存的治療が基本である.

・脊髄症は運動障害・感覚障害・膀胱直腸障害など多彩な症状を呈し,進行性であるため専門医に相談することが望ましい.

◆病態と診断

A病態

・頸椎症とは,椎間板膨隆,骨棘形成,黄色靭帯肥厚などエイジングに伴う組織の変性を意味するが,脊髄を圧迫すれば頸椎症性脊髄症,神経根を圧迫すれば頸椎症性神経根症という.すなわち,X線など画像上の変性所見だけでは必ずしも病的とはいえず,神経を圧迫して疼痛や運動障害を起こすときに治療が必要となることが多い.

・神経根症は末梢神経障害であり保存的治療で軽快することが多いが,脊髄症は中枢神経障害であり基本的に進行性である.

B診断

1.神経根症

・神経根症は基本的に片側の上肢・肩甲部周囲の痛みなどで発症し,頸椎伸展で上肢などに放散痛がみられることが多く,まれに運動麻痺がみられることもある.

・神経根症の診断自体は臨床症状から比較的容易であるが,責任高位の同定はしばしば困難であり,MRIやCTで神経根基部の狭窄を確認できることもあるが多くは不確実である.

2.脊髄症

・脊髄症は中枢神経障害であり,運動障害・感覚障害・膀胱直腸障害など多彩な症状を呈する.

・基本的に緩徐進行性である.責任高位以遠で深部腱反射の亢進などがみられる.

・具体的な主訴としては両手がしびれる,字が下手になった,物を落とす,階段が怖いなどである.

・診断にはMRIが必須であり,硬膜管だけではなく脊髄までおよぶ圧迫所見があり,さらには髄内輝度変化を呈することもある.すべりなど椎体の不安定性がある場合には,MRI所見に比して強めの神経症状を呈することもある.

◆治療方針

A神経根症

 可能な限り保存的治療を行う.時として頸椎カラーの装用が有効である.神経根症の

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