頻度 あまりみない
ニュートピックス
・国内で発生する外傷性脊髄損傷では,60歳代の頸髄損傷不全麻痺で,後縦靭帯骨化症などによる脊柱管狭窄を背景に軽微な外傷で発症するケースが増えている.
・骨髄間葉系幹細胞やiPS細胞局所投与による再生医療の臨床応用が始まっている.
治療のポイント
・受傷からの早期は麻痺領域の機能回復に重点をおくが,麻痺の回復は受傷後3か月程度でプラトーになることを念頭に,退院後の生活様式を予測,それに対応した生活動作訓練を取り入れていく.
◆病態と診断
A病態
・脊髄が機能障害をきたす病態には外傷以外に,腫瘍による圧迫,脊髄梗塞,脊髄炎などが含まれる.
B診断・評価
・損傷の高位は機能を有する脊髄髄節の最尾側で表記する.第6頸髄(C6)損傷とは,第6頸髄の支配筋(手関節背屈)までが作用していることを示す.遠位に感覚・筋力が残存する場合は不全麻痺とよぶ.
◆治療方針
急性期は循環呼吸状態の管理と,感染症(肺炎,尿路感染など),褥瘡など合併症の予防に留意しながら離床を進める.
リハビリテーション訓練は,基本的な動作から複合的な動作に順を追って進めていく.動作の持久性が向上するまでに時間がかかる.
麻痺の残存に応じて,補助具の使用や,障害者手帳の申請,在宅サービスなど制度利用,復職など社会参加,運動など活動性維持の方法について検討し,退院に向けて情報提供と手配を行う.
A診察の流れ
1)麻痺の分布の確認(運動・感覚)
2)筋緊張(痙性)と関節可動域の確認
3)排尿・排便機能の評価
4)疼痛や起立性低血圧の有無の評価
Bリハビリテーション処方
1)食事動作→坐位保持→長坐位→車いす移乗のように段階を踏んで進め,坐位の耐久性が向上するのに合わせ,更衣,整容,トイレ動作の上肢訓練を実施する.
2)胸髄損傷に対しては,体幹の安定性も含めた麻痺の状態を考慮したうえで,装具を用いた歩行練習を実施するか判断する