今日の診療
治療指針

思春期特発性側弯症
adolescent idiopathic scoliosis(AIS)
渡邉航太
(慶應義塾大学准教授・整形外科)

頻度 (11~14歳での発生率は0.87%であるが,女児に圧倒的に多く,13~14歳では女児が2.51%,男児が0.25%である)

ニュートピックス

・「ポリジェニック・リスク・スコア」という方式を用いて,遺伝子情報から思春期特発性側弯症の発症と進行リスクを予測するモデルが開発された.

治療のポイント

・側弯症は立位全長X線写真で診断し,変形の大きさ(Cobb角)を基に治療方針を検討する.

・Cobb角が20度を超え,骨成熟に達していない場合は装具治療を検討する.

・Cobb角が40度を超えた場合,手術を検討する.

◆病態と診断

A病態

・思春期特発性側弯症は脊柱がねじれるように3次元的に変形する.

・側弯症は神経,筋肉や骨の病気などの原因で発生するが,特発性側弯症とは脊柱が曲がる原因が明らかではない側弯症である.

・思春期特発性側弯症は遺伝的因子と生活環境因子が関与して発症する,いわゆる多因子遺伝病である.現在まで日本人を対象とした解析から,LBX1GPR126BNC2など,計20個の疾患感受性遺伝子が同定されている.

B診断

立位脊椎全長X線写真で,Cobb角10度以上が側弯症と診断される.

・側弯症のなかには,腰痛,腰椎椎間板ヘルニア,脚長差などが原因で発生する非構築性側弯症があるので,治療の対象となる構築性側弯症との鑑別が重要である.

・側弯症は重度に進行すると,腰背部の痛みや胸郭の変形による呼吸機能低下を生じる.しかし,初期の段階では大部分の例で無症状である.

◆治療方針

 治療は大きく分けて「経過観察」「装具治療」と「手術」がある.側弯の重症度は脊柱のCobb角で表し,どの治療を行うかは側弯の大きさと骨成熟の程度により決まる.

A経過観察

 軽度の側弯(Cobb角20度未満)の場合は,定期的(3~6か月に一度)なX線写真撮影で,側弯の進行を見逃さないように観察する.

B装具治療

 中等度の側弯(C

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?