今日の診療
治療指針

後腹膜腫瘍,後腹膜線維症
retroperitoneal tumor,retroperitoneal fibrosis
宍戸俊英
(東京医科大学講師・泌尿器科学)

Ⅰ.後腹膜腫瘍

頻度 あまりみない

GL後腹膜肉腫診療ガイドライン(2021年版)

治療のポイント

・原則は外科的切除であるが,しばしば周囲臓器に浸潤しており,複数の診療科による合同手術になることが多い.

◆病態と診断

A病態

・後腹膜腫瘍の年間発症者数は10万に1人で,70~80%が悪性軟部肉腫である.

B診断

造影CTで腫瘍の局在・進展形式,内部の性状を評価する.

・確定診断と治療方針決定のためにCTガイド下針生検が有用である.

◆治療方針

A外科的治療

 悪性が疑われる場合は周囲臓器を含めた完全切除を目指す.脂肪肉腫では肉眼的に正常な脂肪組織も高分化型成分の可能性があり,可及的にすべて切除する.

B薬物療法

 1次治療としてドキソルビシンによる化学療法を行う.2次治療としてパゾパニブ(ヴォトリエント),トラベクテジン(ヨンデリス),エリブリン(ハラヴェン)が保険適用となっている.

■専門医へのコンサルト

・画像診断などで後腹膜腫瘍が疑われた時点ですみやかに専門医へコンサルトする.

■患者説明のポイント

・後腹膜腫瘍はまれな疾患であり,組織型により治療法が異なるため,専門医での精査・治療が必要である旨説明する.

■看護・介護のポイント

・後腹膜腫瘍による症状として腹部膨満感や腫瘤の触知,腰背部痛,腹痛,便秘などがあり,適切な対応,処置を行う.

・原疾患に対する患者の不安を取り除き,症状の緩和をはかることが重要である.



エビデンス

‍ ●進行再発,転移性後腹膜肉腫に対する薬物療法 大規模な前向き臨床試験がなく,現時点では明確な推奨を提示できない(合意率70%).エビデンスの強さD(効果の推定値がほとんど確信できない).ただし,ドキソルビシンを用いたレジメンで一定の縮小効果が認められた報告は複数あり,1次治療としての治療効果はある程度期待できる.

 化学療法後の2次治療として現在パゾパニブ,トラベクテジン,エリブリンが保

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