頻度 あまりみない〔本邦での腎外傷の発生頻度は10万人/年あたり2.06件と推定されている(2006~2008年)〕
治療のポイント
・腎損傷は外因性,尿管損傷は医原性が多い.
・造影CTや尿路造影検査で診断する.
・軽度の腎損傷では保存的治療を選択しうる.
・軽度の尿管損傷では尿管ステント,重度では手術が必要になる.
◆病態と診断
A病態
・本邦での外因性腎損傷の原因は交通事故が最も多く,転倒・転落,スポーツ外傷,暴力と続く.本邦では打撲による鈍的外傷がほとんどで刺創・切創・銃創などの穿通性外傷の割合は少ない.
・腎外傷は他臓器合併損傷率が高く,腎外傷が直接死因となることはまれである.
・尿管損傷は手術などによる医原性損傷が約75%を占め,外因性はまれである.
・尿管が断裂している場合,縫合手術が必要である.
B診断
・腎損傷では背部痛と肉眼的血尿が主な症状である.
・腎損傷の診断は造影CTが重要で,日本外傷学会の腎損傷分類2008(図)を参考に重症度を判定する.腎血管損傷の有無,血腫の広がり,尿漏の有無を経時的に評価する.可能であれば3相での撮影が望ましく,動脈相で動脈損傷,実質相で腎損傷形態,排泄相で尿漏の診断がしやすい.
・尿管損傷に特有な症状に乏しく,約半数で血尿を伴わない.造影CT排泄相で尿溢流所見を認める.逆行性尿路造影でさらに確実な情報を得ることができる.
・手術中に医原性尿管損傷を疑う場合,インジゴカルミン静脈注射で損傷部位を特定できることがある.手術後は側腹部痛やドレーンからの尿流出から尿管損傷を疑う.
◆治療方針
腎臓は後腹膜腔にありGerota筋膜に包まれているため,腎損傷では大出血から緊急手術に至ることは少ない.Gerota筋膜のタンポナーデ効果で自然止血することが多いが,腎筋膜が破綻すると,経カテーテル動脈塞栓術(TAE:transcatheter arterial emboli