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治療のポイント
・嚢胞性腎癌や多発性嚢胞腎〔→,「多発性嚢胞腎(常染色体優性[顕性]多発性嚢胞腎)」の項参照〕以外は,基本的には治療を必要としない.
・嚢胞性腎癌は,手術が第1選択である.
・常染色体優性多発性嚢胞腎は,トルバプタン投与により病状の進行を抑えることができる.
◆病態と診断
・さまざまな要因で腎臓に嚢胞を生じる疾患である.大きくは遺伝子変異による先天的なものと,後天的なものに分けられる.診断には,腹部超音波検査,CT検査,MRI検査といった画像検査が有用である.加えて遺伝性嚢胞性腎疾患では,家族歴の聴取が有用である.
・嚢胞性腎疾患の大部分を,単純性腎嚢胞が占める.なぜ嚢胞が生じるのかは明らかになっていないが,加齢とともに頻度は高くなる.自覚症状に乏しく,画像検査で偶発的に見つかることが多い.嚢胞内への出血や石灰化を伴う場合は複雑性腎嚢胞とよばれる.腎盂のそばに生じる腎嚢胞は傍腎盂嚢胞とよばれ,腹部超音波検査では水腎症と見分けが付きにくい.
・注意を要する後天性嚢胞性腎疾患として,嚢胞性腎癌がある.多房性,隔壁が厚い,造影効果を有する,といった特徴をもつ.造影CTやMRI検査を行い,Bosniak分類(図)に基づいて診断される.
・血液透析を長期に行っている患者には,後天的に腎嚢胞を生じ,多嚢胞化萎縮腎とよばれる.多嚢胞化萎縮腎では,腎細胞癌の発症リスクが高いことが知られており,定期的な画像検査が推奨される.
・遺伝子変異による先天的な疾患として,常染色体優性/劣性多発性嚢胞腎や,結節性硬化症などがある.このうち常染色体優性多発性嚢胞腎は両側の腎臓に多数の嚢胞が発生し,年齢とともに増加し,腎機能低下を招く.患者の約半数が末期腎不全に至り,腎代替療法を必要とする.
◆治療方針
単純性腎嚢胞は基本的に治療不要である.まれではあるが,嚢胞の腫大により疼痛を生じQOLを損な