今日の診療
治療指針

水腎症
hydronephrosis
佐竹直哉
(東京医科大学講師・泌尿器科学)

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◆病態と診断

A病態

・腎盂,尿管,膀胱,尿道といった尿路において,何らかの原因で通過障害が生じると尿路の内圧が上昇し腎盂,腎杯の拡張が生じる.この病態を総称して水腎症とよぶ.

・水腎症の原因としてはさまざまであるが,先天性と後天性に大別される.

・先天性水腎症の原因として,腎盂尿管移行部狭窄症,膀胱尿管逆流(VUR:vesicoureteral reflux),尿管瘤,後部尿道弁,神経因性膀胱などが挙げられる.

・後天性の水腎症は,尿路結石による尿路通過障害が原因として臨床の現場で多々遭遇するが,そのほかにも腎盂尿管癌,膀胱癌などの尿路悪性腫瘍や前立腺肥大症などによる尿排泄障害も水腎症の原因となる.

・消化器および婦人科領域悪性疾患が後腹膜へ播種または直接浸潤し,尿管の閉塞をきたし水腎症の原因となることもある.

・水腎症の状態が長期にわたると不可逆的な腎機能低下や,尿路感染症などさまざまな病態を合併する.

B診断

・結石嵌頓など急激に生じた水腎症の場合は激しい側腹部の痛みを伴う.

・尿路結石や尿路悪性腫瘍が原因である水腎症の場合は,肉眼的血尿尿潜血を伴うことが多い.

・臨床症状などで水腎症を疑った場合にはまず,腹部超音波検査で拡張した腎盂を確認し,閉塞の原因を精査する.

・水腎症の閉塞機転を明らかにするために,静脈性腎盂造影,CT,MRI,逆行性腎盂造影などの画像検査を行う.

・尿路悪性腫瘍による水腎症を疑う場合,尿細胞診逆行性腎盂造影による狭窄部の擦過細胞診を採取する.

◆治療方針

 水腎症はあくまでも病態であって疾患ではないため,水腎症の原因を同定することが重要である.また,水腎症による痛みに対してはNSAIDsなどによる鎮痛薬を使用する.

A先天性水腎症

1.腎盂尿管移行部狭窄症

 痛みなどの臨床症状,繰り返す尿路感染症や腎機能低下などを認める場合は,外科的治療が適応となる.

2.膀胱

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