今日の診療
治療指針

尿膜管腫瘍,尿膜管嚢胞
urachal tumor and urachal cyst
釜井隆男
(獨協医科大学主任教授・泌尿器科学)

治療のポイント

・まれな疾患ではあるが,存在を認識し適切に対応することが重要である.

Ⅰ.尿膜管腫瘍

頻度 (尿膜管癌は膀胱より発生する癌のうち,0.7%以下とまれ)

◆病態と診断

A病態

尿膜管は胎児期に膀胱と臍を結ぶ管状組織として存在するが,出生前に閉鎖し,正中臍索となる.

・出生時に閉鎖せず,残存した尿膜管より発生した腫瘍が尿膜管腫瘍である.

・膀胱頂部すなわち,尿膜管~膀胱移行部に好発する.

B診断

・膀胱に浸潤すると血尿などを生じ,CT検査や膀胱鏡検査,MRI検査などでみつかることが多い.

・麻酔下に経尿道的腫瘍切除術を行い,病理組織診断が得られる.

・診断基準として,①腫瘍が膀胱頂部または膀胱前壁に存在,②膀胱壁内での腫瘍増殖を認める,③膀胱頂部または膀胱前壁を越えた腸上皮化生,腺性膀胱炎や濾胞性膀胱炎などがない,④尿路上皮性の悪性新生物が膀胱内にない,⑤ほかの部位に原発性腫瘍が存在しない,などを満たす必要がある.

・病期分類についてはSheldon分類やMayo分類が用いられる.

◆治療方針

 生存期間の中央値はステージⅠ,Ⅱで7年以上,ステージⅢとⅣでは2年以下とされる.

A遠隔転移なし

 臍,尿膜管(正中臍索),膀胱壁を一塊で切除.リンパ節郭清には診断的意義がある.腫瘍が大きく膀胱に広範に浸潤していれば膀胱全摘を考慮する.術前化学療法は通常行わない.

B切除不能,遠隔転移あり

 確立された化学療法レジメンは存在しない.同様の腺癌である大腸癌を参考に,シスプラチン,5-FU併用療法が行われる.マイクロサテライト不安定性(MSI)陽性の場合はペムブロリズマブが使用可能.

■専門医へのコンサルト

・肉眼的血尿や下腹部原発不明の腫瘤がみられた際は,専門医へコンサルトする.

■患者説明のポイント

・一般的な膀胱癌より予後が不良.

・再発リスクがあり,治療後も定期的な経過観察が必要.

Ⅱ.尿膜管嚢胞

◆病態と診断

A

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