今日の診療
治療指針

膀胱憩室,膀胱瘤
bladder diverticulum and cystocele
奥井伸雄
(神奈川歯科大学教授)

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ニュートピックス

・膀胱瘤のメッシュ(ポリプロピレンなどの合成繊維でできた人工物)を用いる手術と,用いない手術(ネイティブ・ティッシュ・リペア)から,患者の意思で選択をできるデータが出てきている.

・検証された自家移植として,筋膜移植,半腱様筋腱移植手術などがある.

治療のポイント

・膀胱憩室では,膀胱破裂や慢性感染のリスク回避目的で手術を実施する.

・膀胱瘤のメッシュ手術については,一般的な懸念がある.いくつかの利点の証拠があるが,長期的な有効性と悪影響に関する証拠は限定的である.特に,長期合併症の真の有病率は不明である.

・膀胱瘤メッシュ合併症は,すぐに専門医へ紹介する.

◆病態と診断

A病態

1.膀胱憩室

・膀胱憩室は,膀胱壁の固有筋層を介した膀胱粘膜および粘膜下組織のヘルニアである.

・巨大な憩室は,尿閉,尿路感染症,血尿,新生物形成,破裂による急性腹症などを呈する.

・先天性膀胱憩室は,膀胱壁の筋肉組織,特に尿道裂孔近くの線維筋の先天的衰弱が原因である.

・後天性憩室の原因は,神経因性膀胱機能障害や,外括約筋機能不全などの下部尿路閉塞による膀胱内圧の上昇であることが多い.

2.膀胱瘤

骨盤臓器脱(POP:pelvic organ prolapse)の1つで,尿道膀胱接合部(外尿道口から3cm近位の点)またはこれに近位の任意の前点が3cm未満になるような前腟の下降と定義される.

・POPの患者は,骨盤底障害が併存・原因となり,頻尿・尿失禁・排尿障害などを呈する.

・尿道のよじれまたは尿道圧により,膀胱出口部閉塞が発生する可能性がある.

・新たな病気として膀胱瘤メッシュ合併症がある.

B診断

1.膀胱憩室

・画像診断,膀胱神経検査,膀胱内視鏡検査が必要である.

2.膀胱瘤

・膀胱瘤の診断を検討する際には,感染症,血尿,残尿の評価が必要である.患者に排尿症状がある場合は,尿流動態検査・膀胱神経検査が

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