今日の診療
治療指針

膀胱腟瘻,尿管腟瘻
vesicovaginal fistula,ureterovaginal fistula
野口 満
(佐賀大学教授・泌尿器科学)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・海外では,膀胱腟瘻,尿管腟瘻に対して,ロボット支援下腹腔鏡手術による安全で良好な治療成績が報告されている(本邦では保険未収載).

治療のポイント

・瘻孔形成の原因,局在を確実に診断することで適切な治療プランを立てる.

・小さな瘻孔の場合,膀胱留置カテーテルで保存的に治癒することがあるが,治癒率は不良で,基本的には外科的修復を検討する.

◆病態と診断

A病因と病態

・症状として,尿意と無関係で断続的な尿失禁を認める.

・多くの症例で尿路感染を伴っている.

・尿管腟瘻で尿管狭窄・閉塞をきたせば,水腎症による疼痛,発熱を認める.

・病因で頻度が高いものは,子宮摘出や帝王切開などの婦人科手術に伴う医原性である.

・婦人科癌や骨盤内悪性腫瘍の浸潤あるいは放射線治療が原因となることもある.

・慢性の排尿障害,長期間の膀胱留置カテーテルでも起こることがある.

B診断

・インジゴカルミン液の静注,膀胱内注入で腟内のガーゼ・タンポンの青染で膀胱腟瘻の存在を確認できる.尿管腟瘻では,静注で青染するが膀胱内注入では青染しない.

・膀胱腟瘻は膀胱鏡,膀胱造影,造影CT・MRIで,尿管腟瘻では,造影CT・MRI,静脈性腎盂造影,逆行性腎盂造影で瘻孔形成の局在を診断する.

◆治療方針

 膀胱腟瘻の保存的治療として,膀胱留置カテーテル管理が行われるが治癒率は低く,再発も懸念され,根本的治療は外科的修復術である.膀胱腟瘻の手術は,経腟的,経膀胱的アプローチのほか,腹腔鏡による手術があり,患者の状態と瘻孔の部位,サイズなどで術式選択が行われる.

 尿管腟瘻の保存的治療では,DJ尿管ステント留置がある.尿管腟瘻の外科的修復術は,瘻孔部の切除と尿管-尿管吻合術あるいは尿管膀胱新吻合術がある.

 放射線治療後の晩期有害事象としての瘻孔の場合や修復術後の再発などでは,尿路変更が行われることもある.

■専門医へのコンサ

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