今日の診療
治療指針

膀胱・尿道・陰茎損傷
injuries of the bladder,the urethra and the penis
堀口明男
(防衛医科大学校准教授・泌尿器科学)

頻度 あまりみない

ニュートピックス

・2020年の米国泌尿器科学会ガイドラインで尿道外傷の初期治療には膀胱瘻造設による尿のドレナージが推奨された.

治療のポイント

・膀胱外傷の治療は損傷部位により異なり,単純性腹膜外破裂は尿道カテーテル留置による保存的治療,複雑性腹膜外破裂や腹膜内破裂は外科的に修復する.

・尿道外傷の初期治療は膀胱瘻を造設して尿溢流を防ぐことに専念する.続発する尿道狭窄は尿道形成術で確実な治癒を目指す.

・陰茎損傷(陰茎折症)は受傷時のクラック音,陰茎の腫脹と屈曲が特徴的である.損傷した陰茎海綿体白膜の外科的修復が原則である.

Ⅰ.膀胱損傷

◆病態と診断

A病態

骨盤骨折による鈍的損傷が大半を占める.恥骨結合離開や恥骨枝骨折は特に膀胱外傷のリスクが高い.

・膀胱単独外傷はまれで,重篤な他臓器損傷を合併する例が多い.

B診断

・最も重要な臨床所見は肉眼的血尿である.排尿困難,尿閉,腹痛,腹膜刺激症状,恥骨上部の疼痛も見逃せない症状である.

・膀胱造影やCT膀胱造影が有用である.外尿道口から逆行性に造影剤を注入して膀胱を十分に緊満させ,損傷部からの溢流を確認する.

・損傷部位により腹膜内破裂,腹膜外破裂,両者を合併した腹膜内外破裂に分類される.腹膜外破裂は尿溢流が骨盤腔内に限定される単純性腹膜外破裂と,前腹壁や大腿部,陰嚢などに尿溢流が拡張する複雑性腹膜外損傷に分類される.

◆治療方針

 単純性腹膜外破裂は保存的治療(尿道カテーテル留置と予防的抗菌薬投与)の適応である.複雑性腹膜外破裂,腹膜内破裂は外科的に膀胱壁を修復し,尿道カテーテルを留置する.2週間ほど尿道カテーテルを留置し,膀胱造影で溢流が消失したことを確認する.

Ⅱ.尿道損傷

◆病態と診断

A病態

・ほとんどは鈍的外傷で圧倒的に男性に多い.

・会陰部への衝撃により恥骨との間で球部尿道が圧挫される騎乗型損傷と骨盤骨折に伴う後部尿道損傷が代表的

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