今日の診療
治療指針

前立腺肥大症
benign prostatic hyperplasia(BPH)
藤本直浩
(産業医科大学教授・泌尿器科学)

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GL男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン(2017)(修正・追加2020)

治療のポイント

・中高齢男性の下部尿路症状の原因として頻度の高い疾患である.

・QOLの改善・維持と腎後性の腎機能障害や重症の尿路感染症など重篤な合併症の予防・治療が主な治療目的である.

・長期に排尿困難が継続し,不可逆性の膀胱機能障害を生じたあとに前立腺肥大症の治療を行っても十分な症状の改善は得られないことがある.

・症状から前立腺癌との鑑別は困難で,前立腺肥大症においても血清前立腺特異抗原(PSA)値の上昇がみられることがある.

◆病態と診断

A病態

・前立腺の良性過形成による下部尿路機能障害を呈する疾患で,通常は前立腺腫大と膀胱出口部閉塞を示唆する下部尿路症状を伴う疾患である.

・出口部閉塞は尿道抵抗を増大させ排尿症状を生じる.同時に閉塞は膀胱の伸展・虚血・炎症・酸化ストレスをもたらし,膀胱支配神経や平滑筋の変化および尿路上皮由来の伝達物質の放出などを介して蓄尿症状を生じる.

・前立腺肥大症の重要な合併症には,尿閉,肉眼的血尿,膀胱結石,尿路感染症,腎後性腎不全がある.

B診断

・必ず行うべき評価(基本評価一般):症状と病歴の聴取,身体所見,尿検査,PSA測定.

・症例を選択して行う評価(選択評価一般):国際前立腺症状スコア,QOLスコア,過活動膀胱症状スコア(OABSS)などの質問票による症状・QOL評価,排尿記録,残尿測定,尿培養,尿細胞診,血清クレアチニン測定,前立腺超音波検査.

・専門医は客観的な排尿状態評価としての尿流測定,必要に応じて尿流動態検査,内視鏡検査,尿道や膀胱造影検査,上部尿路検査を行う.

◆治療方針

 治療アルゴリズムは「男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン」を参照.

A行動療法

 生活指導,骨盤底筋訓練,膀胱訓練,電気刺激療法,磁気刺激療法などがあり,生活指導としては,

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