今日の診療
治療指針

前立腺癌
prostate cancer
浮村 理
(京都府立医科大学教授・泌尿器科学)

頻度 (男性癌罹患率の第1位で毎年10万人弱が罹患し,高齢化社会を迎えた日本で男性のおよそ7人に1人が罹患する.泌尿器科で診断時に約15%程度で転移があり,すでに根治が困難である)

GL前立腺癌診療ガイドライン第3版(2016年版)(第4版が2022年度に出版予定)

ニュートピックス

・予後延長効果が検証済みの新規薬剤が複数承認されている.

・血清PSA検診の意義が,高いエビデンスで確認されている.

・前立腺MRIで,治療すべき癌の可視化が一定の信頼度をもって可能である.

治療のポイント

・限局性癌(Gleason score≧7)には,ホルモン併用放射線治療あるいは外科的手術(前立腺全摘除術)が標準的選択肢である.

・Gleason score 6の早期癌では,積極的(未治療)監視療法が標準的選択肢である.

・転移を有する癌では化学的去勢(皮下注射)に抗アンドロゲン薬などを併用する.

◆病態と診断

血清PSA(prostate specific antigen)(前立腺特異抗原)値(>4ng/mLで異常)は早期診断・リスク分類に役立ち,治療効果と相関し,再発発見にも役立つが,前立腺肥大症や炎症でも上昇するため,良性・悪性の鑑別にはPSA値の経時的変化の分析や,治療すべき癌の可視化を目的にMRI画像診断を行う.

・確定診断は針生検組織の病理学的診断による.

・MRI可視化病変への標的化針生検と従来法の無作為針生検の併用法が,診断効率向上に寄与する.

・転移の好発部位は骨・リンパ節で,骨シンチ・CT/MRI画像で検索する.

・臨床症状のみでの前立腺肥大症と癌との鑑別は困難で,血清PSA値の確認が必須である.

◆治療方針

A積極的(未治療)監視療法

 悪性度が低く癌体積も小さい場合には,癌が緩徐にしか進行しない,即時治療を要しない癌と判定され,従来の侵襲的治療(手術や放射線治療)では過剰治療となることが危惧され

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