今日の診療
治療指針

前立腺炎(急性,慢性)
prostatitis
酒井英樹
(長崎労災病院・院長)

頻度 割合みる

◆病態と診断

A病態

・前立腺の炎症により,会陰部痛や頻尿,残尿感,排尿痛などの症状をきたす疾患であり,米国国立衛生研究所(NIH)は次の4つのカテゴリーに分類している.

1.カテゴリーⅠ(急性細菌性前立腺炎)

・大腸菌をはじめとする腸内細菌によって引き起こされる感染症であり,発熱,全身倦怠感などの全身症状と排尿痛,会陰部痛,頻尿,排尿困難などの局所症状を伴う.

2.カテゴリーⅡ(慢性細菌性前立腺炎)

・細菌による感染症であるが,発熱は伴わず,頻尿,残尿感,排尿痛などの下部尿路症状,会陰部の疼痛や不快感,陰嚢痛,射精時痛など症状は多岐にわたる.

3.カテゴリーⅢ(慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群)

・慢性細菌性前立腺炎と同様の症状を呈するが,細菌感染は証明されず,症状の緩解と増悪を繰り返すことが多い.

4.カテゴリーⅣ(無症候性炎症性前立腺炎)

・前立腺生検などで炎症所見が認められるが無症状である.治療の対象とならない.

B診断

1.急性細菌性前立腺炎

・尿検査で,膿尿,細菌尿を認める.直腸診では前立腺の腫脹および疼痛を認めるが,前立腺の圧迫により敗血症が惹起される危険があるので,前立腺マッサージは禁忌である.

2.慢性細菌性前立腺炎

・中間尿検査では異常を認めないことが多く,前立腺マッサージ後の初尿検査で膿尿および細菌尿を認める.直腸診で前立腺に圧痛が認められる.

3.慢性前立腺炎/慢性骨盤痛症候群

・前立腺マッサージ後の初尿検査で細菌尿は認めないが,膿尿を認めるⅢAと認めないⅢBに分類される.

◆治療方針

A急性細菌性前立腺炎

 グラム陰性桿菌に抗菌活性のある薬剤を投与する.軽症の場合は,前立腺移行性に優れた経口キノロン系薬剤を用いる.重症の場合は,注射用セフェム系抗菌薬を投与するが,同時に補液などの全身管理が必要である.

Px処方例 38℃以下の発熱で,軽症の場合は1),重症の場合は2)~4)のい

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?