今日の診療
治療指針

尿道下裂
hypospadias
山高篤行
(順天堂大学主任教授・小児外科学)

治療のポイント

・手術のポイントは,陰茎屈曲の是正と,尿道の亀頭部までの延長(尿道形成)である.

◆病態と診断

A病態

・男児1人/300人の頻度で発生する先天性疾患で,低出生体重児に多い.胎児期の外性器発達過程における陰茎腹側の発育障害により生じるとされ,外尿道口が亀頭部先端ではなく,それよりも近位の陰茎から会陰部に開口する.

・外尿道口の位置により,遠位型(亀頭部・冠状溝部・陰茎遠位部)と近位型(陰茎近位部・陰茎陰嚢部・陰嚢部・会陰部)に分類される.

・陰茎は索組織により腹側に屈曲し,勃起により顕著となる.外観の問題以外に,立位排尿困難や性交困難などの問題を生じる.

B診断

外尿道口の位置異常陰茎の腹側屈曲,余剰包皮の陰茎背側偏位,亀頭の露出により出生直後に診断される.しかし,亀頭部・冠状溝部型などの遠位型では,包皮翻転されて初めて気づかれることも多い.

・近年の胎児超音波の進歩により,近位型では出生前診断される場合もある.

・近位型の場合には,停留精巣,矮小陰茎,二分陰嚢などの合併頻度が高く,性分化疾患(DSD:disorders of sex development)の可能性を考慮し,染色体検査や性腺機能検査が行われる.

◆治療方針

 外科的治療が必須となるが,矮小陰茎の場合には術前に男性ホルモン補充療法が行われる場合も少なくない.出生直後に排尿が問題となることは少ないため,1~2歳頃から陰茎屈曲の是正(屈曲のない場合は不要)と,尿道形成が行われる.陰茎屈曲の是正と尿道形成を同時に行う一期的手術と,段階的に行う多期的手術に大別され,近位型の場合には,多期的手術が尿道皮膚瘻などの合併症の発生が少ないと報告されている.

 治療計画は患児の就学などの社会的背景,および心理的影響などを考慮して行われる.

■患者説明のポイント

・尿道形成は,繊細で高度な技術を要する難易度の高い手術である.

・術後は,尿

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