Ⅰ.停留精巣
頻度 割合みる
治療のポイント
・新生児の4~7%に認められるが,生後6か月頃までは自然下降が期待でき,生後1年での頻度は約1%である.
・1歳前後~2歳頃までに精巣固定術を行うことが望ましい.
・放置すると造精障害を生じ,妊孕性が低下する.
・癌化のリスクが正常者より約4倍高い.
◆病態と診断
A病態
・精巣は胎児期には腹腔内に存在し,30~32週までに陰嚢内に下降する.
・停留精巣とは,この下降過程が障害され,経路中の腹腔内や鼠径管内などに精巣が留まっている状態である.
・停留精巣の位置により,腹腔内,鼠径管内,鼠径管外精巣に分類する.両側性を20~30%に認める.
・新生児の4~7%に認められ,男児の生殖器異常としては最も高頻度である.低出生体重児や早産児では頻度が高い.
・生後6か月頃までは自然下降が期待できる.生後1年での頻度は約1%で,それ以降の自然下降は期待できない.
・放置した場合,両側性では全例,片側性では40~80%が,無精子症や乏精子症になる.早期の手術により妊孕性が改善する.
・未治療の停留精巣は癌化リスクが健常者より約4倍高い.成人の精巣癌の2.9%は停留精巣の既往を有する.
・移動性精巣は,精巣が陰嚢内から鼠径部までを容易に移動する状態で,停留精巣とは区別される.若年者の精巣挙筋の自然な収縮が原因とされる.
B診断
・触診により精巣の位置や左右のサイズ差を確認する.
・停留精巣の80%は鼠径部に触知可能であるが,20%は非触知である.
・非触知精巣の場合,腹部超音波検査により鼠径管内,陰嚢内を確認する.確認できない場合は腹腔内精巣の検索のために鎮静下にMRIを行う.
・両側の非触知精巣では,染色体異常の可能性を考慮する.
◆治療方針
治療の主な目的は,妊孕性の改善と,癌化リスクへの対応である.6か月までは自然に精巣が下降する可能性があるため,経過観察する.1歳前後~2歳頃まで