先天性尿路疾患は形態異常の程度が強いもの(水腎症など)は出生前エコーで,その他は尿路感染症,尿失禁を契機として発見される.
先天性性器疾患の多くは出生後まもなく異常に気付かれる.外陰部形態異常がはっきりしない女児内性器疾患は思春期に月経関連の症状で発見される.
小児泌尿器科が診療科として独立している施設は少ないため,疾患の治療は小児泌尿器科,泌尿器科,小児外科,婦人科などで行われている.
本項では尿路性器先天異常のうち他項で取り扱われる疾患との重複を避けて記述する.
Ⅰ.器質的下部尿路通過障害
男児に特有の疾患.後部尿道弁,前部尿道弁,球部尿道狭窄がある.本邦では球部尿道狭窄の頻度が高い.
狭窄が高度な症例では排尿時の高い膀胱内圧や,慢性的な高圧を起因とする膀胱収縮筋の疲弊から膀胱尿管逆流症,水腎症などの発症や拡張の悪化をもたらす(→,「膀胱尿管逆流症」,→,「水腎症」の項参照).影響が両側腎に及ぶため腎機能障害をきたすことも少なくない.
通常出生前に尿路拡張が認められ診断のきっかけとなる.何らかの事情で出生前診断が行われなかった症例では,出生後早期の尿路感染で発見される.すみやかな治療を要するため疾患の存在が疑われた段階で専門施設へのコンサルトが必要である.
高度ではないが有意な狭窄では上部尿路への影響はないものの,膀胱収縮筋の過活動の結果尿失禁が生じる.昼間尿失禁のみのこともあるが,夜尿症との合併もある(→,「夜尿症」の項参照).オムツが外れたあとでパンツに少量の尿漏れが持続し成長に伴う改善傾向がない場合,本疾患の存在を考慮する.尿意が頻回に生じるため頻尿を呈することも多い.オムツが3歳頃に外れ,家庭でしばらく様子をみられていることが多いので医療機関を受診する年齢は4~5歳が多い.膀胱充満時のエコー検査で膀胱壁の肥厚が観察されることがある.
確定診断は排尿時膀胱尿道造