今日の診療
治療指針

尿道腫瘍(尿道カルンクルを含む)
urethral tumor(including urethral caruncle)
浦上慎司
(虎の門病院・泌尿器科部長(東京))

Ⅰ.尿道癌

頻度 あまりみない

治療のポイント

・尿道癌はまれな疾患で,エビデンスレベルの高い標準化された治療はない.

・近位部尿道の癌は遠位部尿道の癌より進行してみつかり,予後不良である.

・尿道癌の治療は手術が基本で,性別・腫瘍位置・病期により治療計画を立てる.

・局所進行癌では集学的治療を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・尿道癌の病因としてヒトパピローマウイルス(HPV)16の感染が関連する.

・男性の前部尿道癌の多くは,尿道狭窄を伴う慢性尿道炎症の既往がある.

・女性では感染や炎症,憩室やHPV感染が原因に挙げられる.

・好発年齢は60歳代以上とされている.

・病理は移行上皮癌,扁平上皮癌,腺癌の順に多い.

・男性においては,後部尿道では尿路上皮癌,前部尿道では扁平上皮癌が多い.前立腺部尿道の尿路上皮癌は,膀胱に生じる尿路上皮癌に随伴することが多い.

・浸潤性膀胱癌に対して尿道摘除を行っていない膀胱全摘術を施行した男性の約5%は,残存尿道に癌が再発する.

・女性ではSkene腺を発生母地とする尿道憩室内の腺癌が特徴的である.

B症状

・閉塞性排尿症状,下部尿路症状,血尿,尿道出血,外陰部腫瘤自覚など.

・尿道周囲膿瘍や尿道瘻により膿性分泌物を認めることもある.

・進行例では鼠径部の無痛性腫瘤(リンパ節腫大)を認めることもある.

C診断

・視診・触診に加えて,膀胱尿道鏡検査で尿道の責任病変を確認し,病理学的検査(尿細胞診・腫瘍生検)で確定診断を行う.

・病期診断はMRI検査で腫瘍の深達度,鼠径部・骨盤内リンパ節転移の有無を確認し,CTや骨シンチグラフィでリンパ節転移や肺や骨などの遠隔転移を評価する.

D予後

・尿道癌全体の5年生存率は50%で,その予後は,解剖学的な腫瘍位置・サイズ・病期・深達度・悪性度による.

・男性の遠位部(振子部)尿道の癌は,近位部(尿道球部から膜様部)および前立腺部尿道の癌よりも,予後良好であ

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