今日の診療
治療指針

尿道狭窄症
urethral stricture disease
藤本清秀
(奈良県立医科大学教授・泌尿器科学)

頻度 割合みる(医原性)

治療のポイント

・尿道ブジーや内視鏡下尿道切開術による尿道拡張は効果が持続せず治癒率は低い.姑息的な尿道拡張を繰り返すことで,狭窄が重症化あるいは複雑化する危険性が高い.

・尿道形成術は最も成功率が高い(80%程度).

・喫煙歴,狭窄長が長い,振子部尿道狭窄,尿道形成術後再手術などの症例は再発率が高い.

◆病態と診断

A病態

・高齢男性に多いが,女性や小児にもみられる.

・原因は医原性や特発性が多い.外傷性や炎症性は少なく,淋菌性尿道炎の後遺症としての尿道狭窄もまれである.

・尿道外傷,経尿道的手術や前立腺癌治療の既往,尿道カテーテル留置の既往,尿道下裂手術の既往,苔癬硬化症の既往などがあり,尿道内腔の狭小化によって尿勢低下,排尿時間の延長,排尿痛,排尿困難,尿閉などの症状を呈する.

B診断

・狭窄の原因や既往歴を聴取する.

・尿流測定,超音波検査(前立腺体積や残尿量の評価),逆行性あるいは順行性尿道造影,骨盤MRI(外傷性の場合),内視鏡などで診断する.

◆治療方針

 一般に拡張処置や手術が必要である.狭窄の原因と部位,狭窄長,過去の治療歴などにより治療指針を検討する.わずかな軽症例を除いて,90%以上の症例は尿道形成術の適応である.

A尿道ブジーや尿道バルンによる拡張

 簡便かつ緊急時にも実施可能な処置のため,外来などで汎用されているが姑息的であり,狭窄部のみならず尿道全体に外傷を与えることとなり,再発予防のための継続的な実施は推奨できない.

B内視鏡下尿道切開術

 未治療,1か所,狭窄長2cm未満の非外傷性球部尿道狭窄症に対する限定的な適応となる.さらに成功率や治癒率が低く,原則的には初回治療のみとする.頻回に行うと狭窄を悪化させ,再狭窄の予防目的で行う間欠自己ブジーや尿道ステント留置も狭窄を複雑化・増悪させるリスクが非常に高く,推奨できない.

C尿道形成術

 狭窄長2cm以上,多

関連リンク

この記事は医学書院IDユーザー(会員)限定です。登録すると続きをお読みいただけます。

ログイン
icon up
あなたは医療従事者ですか?