今日の診療
治療指針

陰嚢水瘤
scrotal hydrocele
藤田和彦
(順天堂大学医学部附属静岡病院教授・泌尿器科)

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治療のポイント

・腫大による違和感があるときに治療の適応となる.

・陰嚢水瘤穿刺術と陰嚢水瘤根治術がある.

・2~3歳までは自然治癒を期待する.

・小児には陰嚢水瘤穿刺術は行わない.

◆病態と診断

A病態

・精巣が胎児期に腹膜とともに陰嚢内に下降する.陰嚢内に精巣が下降すると,筒状に延びた腹膜(鞘状突起)は鼠径部において自然閉鎖し,腹腔内と交通がなくなる.

・精巣周囲の腹膜は残され,少量の内容液とともに存在する.これを精巣固有漿膜という.この内容液の貯留過多により,陰嚢の腫大が起きた状態が陰嚢水瘤である.

・小児では鞘状突起の閉鎖が不完全で,腹腔内と交通していること(交通性陰嚢水瘤)が多い.

B診断

触診で弾性のある液体の貯留を触れる.圧痛や発赤はない.固いときは精巣腫瘍を疑う.また鼠径部に内容物を触れるときは鼠径ヘルニアを疑う.

・画像診断においてはエコーが最も有用である.陰嚢水瘤では,精巣をとり囲むように内容液が存在する.内容液が精巣の頭側に限局している場合や,多胞性の場合は精液瘤のことが多い.精索の一部に内容液が貯留する精索水瘤も頻度は少ないが存在する.診断が難しい場合はMRIも有用である.

◆治療方針

A成人

 腫大による違和感があるときに治療の適応となる.治療には陰嚢水瘤穿刺術と陰嚢水瘤根治術がある.穿刺は翼状針などを用い,ゆっくりと黄色透明の内容液を注射器で引く.白濁しているときは精液瘤である.鼠径ヘルニア,精巣腫瘍が疑われるときに穿刺は禁忌である.手術は,Winkelmannの手術が多く行われている.

B小児

 自然治癒することが期待できるため,経過観察する.ただし鼠径ヘルニアの合併が疑われるときは手術を考慮する.交通性陰嚢水瘤の可能性があるため,水瘤の穿刺は禁忌である.手術は,腹腔と交通性のある鞘状突起を結紮し精巣固有漿膜を開放する.成人に行われるWinkelmannの手術は

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