治療のポイント
・原因は特定されないことが多い.
・積極的な治療を要する場合はきわめてまれであり,大部分は数か月以内に自然緩解する.
・治療を希望する場合も対症療法が中心となる.
◆病態と診断
・精液に血液が混入した状態であり,精液検査で肉眼的に診断が可能である.
・原因は①感染(尿路感染,性感染症)・炎症,②精路(前立腺・精嚢)の閉塞,嚢胞,③腫瘍,④アレルギー性疾患,⑤凝固系異常,⑥医原性(前立腺生検後)などが想定されるが,多くの場合,原因の特定は困難(特発性)である.
・問診で,既往歴〔感染症や下部尿路,精路(精巣上体,精管,精嚢,前立腺)への医療行為,高血圧,肝硬変など〕,家族歴(凝固系異常など),投薬内容(抗凝固薬や抗血小板薬),症状出現時期,回数(持続日数),随伴症状の有無などを確認する.
・前立腺,精嚢を中心とした超音波検査(前立腺結石,射精管閉塞,嚢胞,精嚢の異常など)が有用な場合も多い.
・患者の不安を和らげる意味合いもあり,前立腺,精嚢のMRI検査を行うこともある.
・中高年以降の患者には,前立腺癌のスクリーニングとして前立腺特異抗原は測定しておく.
◆治療方針
特発性の場合は数か月以内に自然緩解することが多いため,経過観察が中心である.治療を希望した場合も対症療法(止血剤投与など)にとどめる.
原因が特定できた場合は,それぞれの原因に見合った治療法を選択する.
■患者説明のポイント
・赤色の精液が排出された患者は驚きと不安を抱えて受診しているため,悪性疾患など積極的な治療を要することはほとんどなく,通常,経過観察するのみで自然緩解することを十分説明し,不安の解消に努める.
・一方で,中高年以降の患者には前立腺癌などを否定することを目的として,前立腺特異抗原の測定や超音波検査,必要であればMRIを行うことを説明する.
・比較的長期間症状が持続することや,いったん症状が改善したとしても