今日の診療
治療指針

排尿困難
difficulty of voiding(urination)
小路 直
(東海大学准教授・腎泌尿器科学)

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治療のポイント

・原因疾患を鑑別したうえで,適切な治療を行う必要がある.

・前立腺肥大症に対する初期治療は薬物療法である.症状の改善が乏しい場合は,泌尿器科専門医に紹介する.

・診断初期から泌尿器科専門医への紹介が勧められる症例としては,神経因性膀胱による排尿筋低活動による排尿困難を呈する症例や,前立腺肥大症のうち,繰り返す尿閉や尿路感染症,尿路閉塞に伴う腎機能障害,膀胱結石を合併する症例が挙げられる.

◆病態と診断

A病態

・排尿困難の病態は,膀胱以下の尿路閉塞が原因となる下部尿路閉塞と,膀胱の収縮力低下による排尿筋低活動に分類される.また,両者が混在する場合もある.

・中高年の下部尿路閉塞の原因として,男性では前立腺肥大症,女性では骨盤臓器脱が多い.

排尿筋低活動の原因として,仙髄排尿中枢より下位の末梢神経障害(骨盤内手術による神経障害,腰部椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄症,糖尿病などによる神経障害)による神経因性膀胱,加齢や動脈硬化により生じる膀胱平滑筋,神経,膀胱血流の障害などが挙げられる.

・下部尿路閉塞の原因となる尿道狭窄の原因は,先天性,外傷性,尿道感染後・経尿道的操作後の合併症などが挙げられる.

心理,情動因子が自律神経を介して排尿困難の原因となることがある.

B鑑別診断

・中年男性の下部尿路閉塞の鑑別診断として,前立腺肥大症,前立腺癌,尿道狭窄などが挙げられる.前立腺肥大症の有無は,自己記入質問票(国際前立腺症状スコア)や,腹部超音波検査による前立腺体積の測定(30mL以上は前立腺肥大と考えられる)により評価される.前立腺肥大症が認められた際には,尿路感染症膀胱結石を合併している場合もあるため,尿検査腹部超音波検査による併存疾患の有無を評価することが重要である.また,前立腺癌による尿道圧迫の有無を評価するには,前立腺特異抗原(PSA)値の測定が有用である.尿道狭

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