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治療のポイント
・女性では腹圧性・切迫性・混合性尿失禁が約5:2:3の割合となっている.主に症状診断で鑑別して治療する.
・男性では前立腺肥大症がらみの切迫性尿失禁が多く,残尿測定をモニターする.
・腹圧性・切迫性・混合性尿失禁では,行動療法(生活指導,骨盤底筋訓練,膀胱訓練)をベースとする.
・切迫性尿失禁では過活動膀胱治療薬が有効で,難治例にはボツリヌス療法などの選択肢がある.
・腹圧性尿失禁が重症・骨盤底筋訓練で改善しない場合は,中部尿道スリング手術(TVT・TOT)を考慮する.
・溢流性尿失禁は腎機能悪化のリスクがあり,清潔間欠導尿を考慮する.
◆病態と診断
A病態
尿失禁とは不随意に尿が漏れることで,下記のタイプがある.
1.腹圧性尿失禁
・女性骨盤底の解剖学的弱点,分娩・加齢による骨盤底脆弱化を背景に,尿道過可動や尿道括約筋不全(ISD:intrinsic sphincter deficiency)が生じ,腹圧負荷に一致して尿が漏れる.分娩をきっかけに20~30代から増加する.
・男性では前立腺癌・前立腺肥大症手術時の尿道括約筋損傷で起こる(前立腺切除後尿失禁).
2.切迫性尿失禁
・急な,我慢のできない病的尿意(尿意切迫感)を伴う尿失禁で,膀胱の不随意収縮を背景とする過活動膀胱の症状である.男女で加齢とともに増加する.
3.混合性尿失禁
・腹圧性と切迫性が混在する.
4.溢流性尿失禁
・膀胱出口部閉塞(前立腺肥大症,骨盤臓器脱など)や低活動膀胱のため,増加した残尿が溢れるように漏れる.
5.機能性尿失禁
・身体運動機能低下や認知症のため,トイレ到達に時間がかかる,排尿動作を適切に行えないなどの状況で漏れる.切迫性尿失禁が機能性の要素で悪化することがある.
・ほかに尿管異所開口などの先天奇形や子宮全摘術後などの瘻孔(膀胱腟瘻・尿管腟瘻)が持続的尿失禁を呈し,専門的診療を要する.
・尿失禁と