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治療のポイント
・保湿剤を十分かつ適切に使用する.
・皮膚炎は,副腎皮質ステロイド外用薬などで早期に抑制し悪循環を防ぐ.
・機械的刺激の回避や保湿環境の整備を指導する.
◆病態と診断
A病態
・高齢者の皮膚では,発汗低下を含む生理機能の低下により,角層水分量が低下し,角層が厚くなる.その結果,乾燥しひび割れやすい皮膚となる.
・加齢による発汗低下は足側から始まる.したがって,下腿は保湿能が低下しやすく高頻度に発症する.
・角層水分量が低下すると,皮膚炎が生じやすくなる.また,角層バリアの低下による神経線維の表皮内への伸長などでかゆみ閾値が低下すると考えられる.
・皮膚炎が生じると角層バリアが低下し,さらに悪化するという悪循環が生じる.
B診断
・下腿に好発する乾燥肌(鱗屑の付着),さざ波様の亀裂を伴った炎症(紅斑や丘疹からなる湿疹性病変)の存在によって診断する.
◆治療方針
十分量の保湿剤の使用や住環境の整備による保湿が基本である.入浴時のナイロンタオルの使用や機械的刺激の生じやすい繊維を使用した下着や衣服を避けるなど,皮膚を愛護的に扱うように指導する.皮膚炎(湿疹)に対しては,適切な副腎皮質ステロイド外用治療によってすみやかに収束させる.
A乾燥肌に対する外用治療
保湿剤(保湿因子を含む外用薬が望ましい)を適切に使用する.使用しやすい剤形(ローション・クリーム・スプレーなど)の選択肢を示し,季節などの状況に応じて使い分ける.
Px処方例
ヘパリン類似物質(ヒルドイド薬)ソフト軟膏 1日数回 塗布
B皮膚炎に対する外用治療
症状に対応した適切なランクの副腎皮質ステロイド外用薬を使用する.
Px処方例
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(アンテベート薬)軟膏 1日1~2回 塗布
■専門医へのコンサルト
・難治の場合は,診断の見直しや治療薬の選択・使用方法の改善,あるいは生活指導などを目的