治療のポイント
・原因によって治療法が異なることを念頭におく.
・血管壁の異常による紫斑のなかには,経過観察でよいものも存在する.
・血管炎によるものに対しては「血管炎・血管障害診療ガイドライン2016年改訂版」に基づき,ステロイドの全身投与などが考慮される.
◆病態と診断
・紫斑とは皮膚,皮下あるいは粘膜などにおいて,赤血球が血管外へ漏出することにより発生する内出血を反映し,紫色調を呈する皮疹を指す.生じた直後は赤血球のヘモグロビンのため鮮紅色にみえるが,時間経過とともに徐々に紫に,さらにヘモジデリン沈着により褐色調に変化する.
・大きさにより点状出血(径1~5mm程度),斑状出血(径数cmまで),皮下血腫などに分けられる.
・診断のポイントとして,紫斑は硝子板で上から圧迫しても漏出した赤血球が血管内に戻らないため色調は消退しない.一方,紅斑は皮膚の真皮上層の毛細血管が増加したり拡張し充血することによって生じる赤みであるため圧迫すると血流が途絶え色調は消退する(硝子圧法).
・紫斑の原因はさまざまであるが,図のような疾患が考慮される.
◆治療方針
図のような原因に応じて,経過観察,対症療法,あるいは副腎皮質ステロイドなどが選択される.
Px処方例 血管壁の強化および止血の促進,色素沈着の予防のため下記を症状に応じて投与する.
1)カルバゾクロム(アドナ薬)錠(30mg) 1回1錠 1日3回 毎食後
2)トラネキサム酸(トランサミン薬)錠(250mg) 1回1錠 1日3回 毎食後
3)アスコルビン酸・パントテン酸カルシウム(シナール薬)配合錠 1回1錠 1日3回 毎食後
■専門医のコンサルト
・浸潤を触れる紫斑は血管炎の存在が強く疑われるので,専門医にコンサルトする.
・皮膚の紫斑のみならず歯肉出血・鼻出血,あるいは内臓病変が存在する場合は全身治療の適応となることが多いため,やはり専門医へのコンサルトが
関連リンク
- 治療薬マニュアル2023/カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム水和物《アドナ》
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