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◆病態と診断
A病態
・表皮,毛包漏斗部由来の上皮成分が外傷などを契機に真皮内に陥入し,それが増殖することで,内部に角化物が充満した嚢腫を形成する.
・そのため経時的に嚢腫は増大し,時に二次感染を併発すると発赤,腫脹を呈し,腐臭を伴う粥状物が排出されることがある(感染性粉瘤).
・ほぼ全身に生じるが,顔面,体幹部に好発する.
B診断
・多くは大豆大~母指頭大の皮下腫瘤で,弾性やや軟~硬,下床とは可動性を有する.臨床所見で診断可能なことが多いが,腫瘍直上皮膚に嚢腫の開口部となっている黒色の面皰様小陥凹(臍窩)があれば確実である.
・診断に悩む場合は,超音波検査も有用である.
◆治療方針
非感染性の場合は,患者の希望に応じて経過観察も選択肢となる.根治術としては,嚢腫壁(被膜)を含めた外科的切除が必要となる.
Aくり抜き(へそ抜き)法
感染の既往がなく,面皰様小陥凹(臍窩)がある場合,よい適応となる.皮膚生検用のディスポーザブルパンチを用いて臍窩の部分をくり抜く.その後,圧迫により内容物を押し出した後に,眼科用剪刃で嚢腫壁を周囲組織から剥離を進め一塊にして摘出する.途中で被膜を破くと,内容物や被膜の取り残しにつながるため注意が必要である.傷は小さいため縫合は不要であり,整容的に優れている.抗菌薬軟膏処置で治癒をはかる.
B紡錘形切除
感染を繰り返し癒着が強いことが臨床から予想される症例において推奨される.触診で腫瘍辺縁を確認し,過不足なく切除できる紡錘形のデザインで切除を行う.粉瘤と直上皮膚をまとめて切除し,生じた皮膚欠損部は縫合し閉創する.
C切開排膿
感染を伴っている場合や切除するには大きすぎる場合,根治術を行う前に切開排膿を行う.腫瘍直上皮膚に切開を加え,圧迫にて可能な限り排膿を行う.切開部は縫合せず開放のままとし,自然排泄を促す.時期をみて根治術を検討する.