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治療指針
産婦人科

不妊症―挙児希望患者の取り扱い
management of infertile couple
岩佐 武
(徳島大学大学院教授・産科婦人科学)

頻度 よくみる

◆病態と診断

A病態

・生殖年齢の男女が妊娠を希望し,ある一定期間避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず,妊娠の成立をみない場合を不妊といい,妊娠を希望し医学的治療を必要とする場合を不妊症という.

・本邦では不妊症の頻度は10~17%とされ,女性の年齢が高いほどそのリスクは上昇する.

・不妊症の原因として,卵管因子,排卵因子,男性因子の占める割合が高く,子宮因子,免疫因子,子宮内膜症因子によるものも一定数認める.また,これらの原因を認めない原因不明不妊が10~25%を占めるとされている.

B診断

・男女双方に対して詳細な問診,診察,検査を行うことで不妊原因を特定する.障害されている部位に加え,その原因疾患についても明らかにする.

・初診時に十分な時間をかけて問診を行う.不妊期間,月経歴,妊娠・分娩歴,婦人科疾患を含む既往歴・合併症,性交の状況,不妊症検査・治療歴,家族歴などを聴取する.

・女性側の診察として,内診や超音波断層検査にて子宮・付属器の状態を確認する.これと同時に腟分泌物の性状や圧痛の有無などについても確認する.

・女性側の検査として,排卵の評価,卵管通過性の評価,卵巣予備能の評価を行う.排卵の有無については基礎体温,超音波断層検査,各種ホルモン検査(下垂体ホルモン,性腺ホルモン)により評価する.

卵管通過性の評価として,子宮卵管造影や通水検査を行う.これらには治療効果もあるため,初期検査として行うべきものである.また,クラミジア抗体検査は卵管病変を予測する検査として有用とされている.

・高齢や卵巣機能の低下が予測される場合は,卵巣予備能の評価として,卵胞期初期の卵胞刺激ホルモン(FSH:follicle stimulating hormone)値や抗ミュラー管ホルモンの測定を行う.

・男性側の検査として,精液検査を行う.重度の異常を認める場合は泌尿

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