GL生殖医療ガイドライン(2021)
ニュートピックス
・日本産科婦人科学会の主導で,着床前胚染色体異数性検査の有用性に関して,多施設共同研究が進行中である.
・ARTの凍結保存技術の進歩により,悪性腫瘍などの治療による妊孕性(生殖機能)低下に備え,卵子,胚(受精卵)および精子を凍結保存する妊孕性温存療法が,医療行為としての選択肢となった.
治療のポイント
・ARTを開始する際には,日本産科婦人科学会への施設登録が必要である.当学会の見解に従い,ART実施施設は,施設,設備,要員の基準を満たすことを要する.
・多胎妊娠の発生抑制のため,胚移植数は原則1個とする.
・女性年齢の上昇に伴い,ART治療あたりの出生率は低下する.その施行回数の増加とともに,累積出生率は向上するが,不妊原因,女性年齢,治療法による影響を受ける.
・調節卵巣刺激法では,OHSSの発症や重症化を予防するために,リスク因子を認識する.発症リスクが高いと判断された場合には,全胚凍結を実施する.
◆病態と診断
A病態
・不妊症に実施されるARTは,妊娠成立のために,卵子,精子,あるいは胚を体外で取り扱う技術や治療である.
・ARTには,体外受精,顕微授精,胚移植,凍結保存などが含まれる.
・日本産科婦人科学会の報告によれば,2019年の総治療周期数は458,101件,出生児数は60,598人,累積出生数は710,931人となっている.
B診断
・両側卵管閉塞,重度男性不妊などがARTの絶対的適応である.子宮卵管造影検査や精液検査で診断される.
・相対的適応は一般不妊治療で妊娠不成立の場合である.ARTが有効とされる原因不明不妊は,一連の不妊検査で明らかな異常所見を認めないことより,診断される.
◆治療方針
A体外受精・顕微授精
卵巣予備能(卵巣機能)を評価して,適切な卵巣刺激法を選択する.単一あるいは複数個の卵胞発育と内因性の黄体化ホルモン(L