今日の診療
治療指針
産婦人科

卵巣過剰刺激症候群
ovarian hyperstimulation syndrome(OHSS)
廣田 泰
(東京大学大学院准教授・産婦人科学)

頻度 よくみる(排卵誘発・卵巣刺激により5%程度が発症)

ニュートピックス

・「生殖医療ガイドライン」が2021年11月に刊行され,エビデンスと国内の診療実態に基づいてOHSSの予防と対策に関する記載がされた.

治療のポイント

・不妊治療で用いるhMG製剤やhCG製剤によって,卵巣腫大,血液濃縮,腹水・胸水貯留が起こり,妊娠症例では重症化・遷延化する.

・重症例では血栓症や腎不全を起こす危険性がある.

・リスク因子を有する場合に,卵巣刺激やトリガーの方法選択,トリガー回避や全胚凍結,カベルゴリンやレトロゾールなどにより発症・重症化予防を行う.

・中等症以上では高次医療機関での管理,重症で入院管理を行う.

◆病態と診断

A病態

・生殖医療の排卵誘発や卵巣刺激の過程で起こる.

・卵巣の血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)分泌増加により,血液中の水分とAlbが腹腔内に漏出し循環血液量が減少する.血液濃縮尿量減少が起こり,Ht上昇,低血圧,頻脈が起こる.

B診断

・初発症状は,腹部膨満感下腹部痛体重増加である.

腹部膨満感嘔気・嘔吐,卵巣最大径≧8cm,上腹部に及ぶ腹水,血液検査所見悪化,妊娠症例,のいずれかがあれば中等症として高次医療機関で管理する.

・腹痛・呼吸困難,腹部緊満を伴う腹部全体の腹水胸水,卵巣最大径≧12cm,Ht≧45%,白血球数≧15,000/μL,総蛋白<6g/dLまたは血清Alb<3.5g/dL,のいずれかがあれば重症として入院管理する.

◆治療方針

 リスク因子を把握し適切な予防法を講じ,発症時は早期に対応する.

Aリスク因子の把握

 リスク因子としては,若年(≦35歳),やせ,多嚢胞性卵巣症候群,OHSS既往,抗ミュラー管ホルモン(AMH:anti-Müllerian hormone)高値(>3.3ng/mL),卵巣刺

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