今日の診療
治療指針
産婦人科

月経の人工移動法
intentional regulation of menstrual cycle
阪埜浩司
(慶應義塾大学准教授・産婦人科学)

治療のポイント

・月経の人工移動には月経を遅らせる方法(延長)と早める方法(短縮)がある.

・エストロゲン・プロゲスチン配合薬(経口避妊薬を含む)やプロゲスチン製剤が用いられる.

・月経延長・短縮どちらも服用後2~3日後に消退出血を生じる.

・原則自費診療で行う.

・ホルモン剤における嘔気,頭痛,乳房痛,静脈血栓症のリスクを考慮し,禁忌や慎重投与の症例に留意する.

・産褥6か月以内や術前4週間以内は処方を控える.

◆病態と診断

・月経は約1か月に1回自発的に生じる子宮内膜からの周期的出血であるが,疼痛や貧血症状など女性の仕事,学業,スポーツ,旅行などに支障をきたすことがある.このような社会的理由のみならず,抗癌剤投与や血液疾患による出血を防ぐ医学的理由でも月経の人工移動を行う場合がある.

・月経の人工移動にはエストロゲン・プロゲスチン配合薬(経口避妊薬を含む)やプロゲスチン製剤が用いられる.月経の延長法と短縮法があり,それぞれ薬剤の開始のタイミングや投与期間が異なり,さまざまな方法があるが代表的な方法を記載する.それぞれのホルモン剤には禁忌や慎重投与の症例があり,また特徴的な副作用もあり,留意しなくてはならない.

◆治療方針

A月経の延長法

 黄体期である月経予定の5~7日前より中用量エストロゲン・プロゲスチン(EP)配合薬やプロゲスチン製剤を月経延長希望日まで連続服用する.服用後2~3日で消退出血が起きる.プロゲスチンとしてノルエチステロンが使用されるが,消退出血を起こせない可能性もあり,中用量EPのほうが確実である.黄体期は排卵後の処方であり,妊娠の可能性を念頭におく必要がある.

 卵胞期からの月経延長は,月経7日目以内に中用量EP配合薬や経口避妊薬を月経延長希望日まで連続服用する.嘔気や胃部不快感は経口避妊薬のほうが低いが,不正出血は生じやすい.経口避妊薬は一相性が使用しやすい.

1.黄体期から

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