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治療指針
産婦人科

更年期障害
climacteric disturbance(disorder)[menopausal disturbance(disorder)]
武田 卓
(近畿大学教授・東洋医学研究所)

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GL産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020

GLホルモン補充療法ガイドライン2017年度版

ニュートピックス

・新たに天然型黄体ホルモン製剤(プロゲステロンカプセル)が登場し,HRTの副作用である乳癌発症増加を回避できる治療法として期待される.

治療のポイント

・単に薬物療法を行うだけでなく,患者の愁訴を傾聴する姿勢が重要である.

・薬物療法としては,HRT,漢方薬,向精神薬などが使用される.

◆病態と診断

A病態

・更年期に現れる多種多様な症状で,器質的疾患によらない症状を更年期症状とよび,さらに日常生活に支障をきたす病態を更年期障害とよぶ.

・閉経前後の退行性変化(エストロゲン変動と低下)と家庭・社会での環境変化(心理社会的変化)などが複雑に作用し発症する.

・更年期症状は,①血管運動神経症状(ほてり・のぼせ,発汗,動悸など),②精神神経症状(情緒不安定,イライラ,抑うつ,不安,不眠など),③その他(肩こり,関節痛,腰痛などの運動器症状,乾燥,かゆみなどの皮膚粘膜症状,排尿障害,頻尿,性交痛などの泌尿生殖器症状)からなり,重複することが多い.

B診断

・上記のような臨床症状に基づく.

・器質的疾患(特に,悪性疾患,甲状腺疾患)や精神疾患の除外が必須である.

・血清エストラジオールや卵胞刺激ホルモンは,閉経後約2年まで大きく変動するため,これらの測定は参考にとどめる.

◆治療方針

 最初に社会心理的背景を含めた十分な問診を行う.生活指導を行い,次に薬物治療を併用する.薬物療法の使い分けとしては,血管運動神経症状が主症状の場合はホルモン補充療法(HRT:hormone replacement therapy),不定愁訴が主症状の場合は漢方治療,精神神経症状が主症状の場合は向精神薬やカウンセリングを選択する.これらの併用治療も可能である.

AHRT

 子宮摘出後の場合には,卵胞ホルモン製剤単

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