今日の診療
治療指針
産婦人科

子宮内膜症
endometriosis
森 泰輔
(京都府立医科大学教授・産婦人科学)

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ニュートピックス

・2021年12月24日,経口GnRHアンタゴニストのレルゴリクスが「子宮内膜症に基づく疼痛」の適応を取得した.

治療のポイント

・臨床症状は疼痛(月経困難症や性交痛),不妊,卵巣子宮内膜症性嚢胞である.

・思春期から閉経における女性のQOLを著しく損ねるため,症状のみならず,年齢軸も加味し治療方針を組み立てることが重要である.

・ホルモン療法を主体とした薬物療法は疼痛症状軽減に有用である.

・薬物療法で疼痛コントロールが不十分な場合には,手術療法を考慮する.

◆病態と診断

A病態

・子宮内膜症とは,子宮内膜あるいはその類似組織が異所性に存在する疾患である.

・その発生にはエストロゲンが深く関与している.

・生殖年齢女性のおよそ10%に存在する.

・病理学的には良性であるが増殖・浸潤し周囲組織と強固な癒着を形成し,類腫瘍性の性格を有する.

B診断

・定義上,組織学的な診断がなされるべきであるが,実際には腹腔鏡所見による診断が行われている.超音波断層法やMRI検査も子宮内膜症の診断に用いられる.

・自覚所見,他覚所見,血液生化学検査も有用であるが,画像診断や腹腔鏡所見と組み合わせて診断する.

◆治療方針

 治療の目的は疼痛制御・妊孕性温存・病勢進行の抑制である.特に患者に挙児希望があるかどうかで治療方針は大きく変わる.したがって,症状のみに着目するのではなく,年齢軸を含めた患者のバックグラウンドを十分に理解したうえで,薬物療法・外科的治療,不妊治療,あるいは無治療での経過観察から最も適切な治療方針を患者との十分な対話のなかで選択することが求められる.

A痛みを伴う子宮内膜症

1.現在挙児希望がある場合

 対症療法,不妊患者の治療方針に準じた治療を行う.

2.将来的に挙児を希望するが,現在希望がない場合

 対症療法あるいはホルモン療法を行う.症状が持続する場合や薬物療法の副作用がある場合は

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