今日の診療
治療指針
産婦人科

骨盤臓器脱
pelvic organ prolapse
巴ひかる
(東京女子医科大学附属足立医療センター教授・泌尿器科)

頻度 よくみる(低い報告で6%)

GL女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版](2019)

GL産婦人科診療ガイドライン―婦人科外来編2020

治療のポイント

・ロボット支援下仙骨腟固定術が2020年4月に保険適用となった.

・重症度や患者の希望などを考慮し治療法を決定する.

・下垂感・異物感だけでなく排尿・排便機能,性機能についても留意し,患者主訴やQOLの改善を望める治療法を選択する.

・重症例では下部尿路閉塞から両側水腎症となり,無症状のうちに腎後性腎不全をきたすことがあるので注意する.

◆病態と診断

A病態

・妊娠・出産,荷重労働,便秘,肥満,加齢などにより骨盤底筋群や靭帯が弛緩し骨盤底が脆弱化することによって,腟から骨盤内臓器が脱出することである.

・前腟壁下垂である膀胱瘤,後腟壁下垂である直腸瘤,子宮脱や,子宮摘出術後の腟断端脱や小腸瘤などがある.

・尿意切迫感,頻尿,切迫性尿失禁などの過活動膀胱を合併することがあり,また同じく骨盤底脆弱が原因の腹圧性尿失禁を併発していることも多い(,「尿失禁」の項参照).

B診断

台上診を行う.腹圧負荷による下垂の変化を確認する.起床時には脱出はなく,長時間の立位・活動後や排便後に脱出してくることが多い.

・評価にはPOP-Q(pelvic organ prolapse quantification)systemを用いる.

・簡易的には,最も下垂した部位が処女膜から±1cm内にあればStage ⅡとするPOP-Q stage分類を用いてもよい.

◆治療方針

 有効な薬物治療はない.軽症では骨盤底筋訓練である程度の効果を望めるが,中等症以上ではペッサリーまたは手術療法が必要となる.骨盤臓器脱に伴う過活動膀胱や切迫性尿失禁は,ペッサリーや手術によって膀胱出口部閉塞が修復されることで,消失または改善する.

A骨盤底筋訓練

 Stage Ⅱ以下で,自覚症状だけでなくS

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