今日の診療
治療指針
産婦人科

卵巣腫瘍(良性,境界悪性)
ovarian tumors(benign,borderline malignancy)
梶山広明
(名古屋大学大学院教授・産婦人科学)

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治療のポイント

・良性卵巣腫瘍の場合,腫瘍径が6cm以上であれば手術療法を考慮する.

・腫瘍の質的状態,年齢,および周囲との癒着などを考慮して術式を決定する.

・卵胞嚢胞や黄体嚢胞などの類腫瘍が想定され,縮小傾向が期待される場合には1~3か月後に再度超音波検査で確認する.

◆病態と診断

・卵巣腫瘍とは卵巣に発生する腫瘍の総称である.約90%は良性とされ,卵巣の組織由来によってさまざまな組織型に分類される.

・卵巣腫瘍の診断には問診,内診,超音波検査,腫瘍マーカー,CT,およびMRIなどが行われる.

・良性を示唆するMRI所見として,腫瘍内部が水様の液体が想定され,かつ単胞性であれば漿液性腺腫,多胞性であれば粘液性腺腫,脂肪であれば成熟嚢胞性奇形腫,血液の貯留であれば子宮内膜症性嚢胞などがあげられる.

腫瘍マーカーはCA125,CA19-9,CA72-4,HE4,およびCEAなどのなかから適宜組み合わせて測定を行う.異常高値を示した場合には悪性の可能性があるものの,偽陽性や偽陰性も十分ありうることに留意する.

・子宮内膜症性嚢胞の場合,まれに悪性転化を生じることがある.特に40歳以上,10cm以上のサイズ,そして嚢胞の急速な増大を認める場合には,悪性転化のリスクが上昇するとされるため注意を要する.

・境界悪性腫瘍は「良性腫瘍と悪性腫瘍の中間的な組織像を示し,悪性度は低いため長い経過をとって再発することはあっても腫瘍死に至ることはほとんどない」と定義される.WHO分類(2014)では境界悪性腫瘍の所見の一部である微小浸潤の定義が,浸潤層の大きさは5mm未満と明確化されている.

・前述のMRI検査所見で嚢胞内部に充実性部分を認める場合は,境界悪性以上の腫瘍性病変であることが多い.漿液性境界悪性腫瘍,粘液性境界悪性腫瘍,および漿液粘液性境界悪性腫瘍などが知られている.時に腹膜インプラント

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