今日の診療
治療指針
産婦人科

妊娠と感染症
infectious diseases during pregnancy
下屋浩一郎
(川崎医科大学主任教授・産婦人科学1)

治療のポイント

・妊娠中の感染症に関して,母体の重症化,産科合併症,胎児・新生児感染についての理解を深めておく必要がある.

・感染症に対する治療薬は一部に妊娠中の禁忌薬はあるが,基本的には非妊娠時の治療と同様に行う.

・分娩様式は基本的には経腟分娩であるが,一部(HIV,外陰ヘルペスなど)母子感染予防に帝王切開が選択される.

 下記Ⅰ~Ⅷは妊娠中にスクリーニング検査が推奨されているが,Ⅸ,Ⅹは必ずしも推奨されていない.Ⅺ~ⅩⅥは妊娠に大きな影響を及ぼす感染症である.

Ⅰ.梅毒

◆病態と診断

A病態

・梅毒は近年感染者が増加しており,過去の疾患ではない.妊娠中の感染によって先天梅毒をきたす.妊娠第2三半期以降はTreponema pallidumが胎盤を通過し先天性梅毒を起こす可能性があるため,妊娠初期にスクリーニングを施行する.

B診断

・脂質カルジオリピンを抗原とする非特異的検査(STS:serological tests for syphilis)であるRPRカードテスト,トレポネーマそのものを抗原とする特異的検査法であるTPHA法,またはFTA-ABSのいずれかを検査する.

・多くの場合感染後1か月以内にSTSが陽性となり,さらに2~3週間後にTPHAが陽性となる.特に妊婦では,梅毒罹患がなくとも生物学的偽陽性(BFP:biological false positive)を認めることがあり,STSが陽性でも8倍未満で,TPHAが陰性であればBFPの可能性も考慮する.なお,通常妊娠初期に検査を行うが,感染リスクや症状を認める場合には妊娠後期にも検査を行う.

◆治療方針

 診断がつき次第,早期に治療を開始する.また,妊娠中期に超音波検査で胎児スクリーニング(胎児肝腫大,胎児腹水,胎児水腫,胎盤肥厚)を行い,妊娠中期と分娩時にRPR法で治療効果を判定し,出産後には児の先天梅毒の診断を行う.

Px処方例

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