今日の診療
治療指針
産婦人科

妊娠悪阻
hyperemesis gravidarum
杉浦真弓
(名古屋市立大学大学院教授・産科婦人科学)

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GL産婦人科診療ガイドライン―産科編2020

治療のポイント

・少量頻回の食事摂取と水分補給を促す.

・ウェルニッケ脳症,電解質異常,腎機能障害,深部静脈血栓症の予防に努める.

・輸液にはビタミンB1 を添加する.

◆病態と診断

A病態

・つわりが重症化し,体重減少,脱水,アシドーシスや電解質異常を呈する病態.

・「つわり」では嘔気,嘔吐の頻度は,妊娠の70%にみられ,「妊娠悪阻」は1.5%と報告されている.つわりの90%は妊娠20週までに消失するが,妊娠悪阻は最後まで持続する症例も少なくない.

B診断

・嘔吐により5%以上の体重減少脱水電解質異常を起こしたときに妊娠悪阻と診断されるが,明確な定義はない.胃潰瘍,虫垂炎,消化管閉塞,胞状奇胎,尿路感染症,腸炎,胆嚢炎,膵炎などを鑑別する.

・原因不明だが,家族歴があると頻度は3倍に上昇し,胎盤の蛋白をコードするGDF15IGFBP7,ホルモンレセプターGFRALPGRのバリアントとの関与が報告されている.

◆治療方針

A嘔気,嘔吐のコントロールとQOL改善のための治療

 ビタミンB6(ピリドキシン),抗ヒスタミン薬,メトクロプラミド,しょうが粉末の経口投与が,それぞれつわり症状の緩和に効果があったとするRCTがある.

Px処方例 下記のいずれかを用いる.

1)ピリドキサール(ピドキサール)錠(10mg) 1回1錠 1日3回 毎食後

2)ベンフォチアミン・ピリドキシン・シアノコバラミン(ビタメジン)配合カプセルB25 1回1カプセル 1日3回 毎食後

3)ジフェンヒドラミン(レスタミン)錠(10mg) 1回1錠 1日2~3回保外

4)メトクロプラミド(プリンペラン)錠(5mg) 1回1錠 1日3回 毎食前

 米国産科婦人科学会(ACOG)Practice Bulletinでは,ビタミンB6 単独もしくはdoxylamine(抗ヒスタミン

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